発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイント

発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイントのタイトル画像

お子さんが発達障害と診断されていると、小学校の進級先を「特別支援学級」にするのか、「通常学級」にするのか、すごく悩んでしまいます。生徒数も多い通常学級で発達障害のある子が過ごす場合、保護者として注意したいポイントについてお話したいと思います。

A17554a0d2b15a664c0e73900184544f19e70227 s
182819 View

通常学級でも「合理的配慮」が義務化 、しかし現実は…?

こんにちは。『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。

2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、一人ひとりの困りごとに合わせた「合理的配慮」を行うことが義務化されました。

これによって、学校の通常学級でも、障害のある児童に対して個別のきめ細かい対応を教員側が行うことが求められるようになりました。

たとえば、文字の読み書きに困難がある児童には、タブレットや音声読み上げソフトで学習することを可能にするなど、一人ひとりの凸凹に合わせて、困難を解消する措置をとるのが合理的配慮です。
発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイントの画像
合理的配慮の具体例
Upload By 立石美津子
合理的配慮とは?考え方と具体例、障害者・事業者の権利・義務関係、合意形成プロセスについてのタイトル画像
関連記事
合理的配慮とは?考え方と具体例、障害者・事業者の権利・義務関係、合意形成プロセスについて
ただし、これで学校側の支援体制がすぐに変わるというわけではありません。地域、学校、教師の指導力の差もあります。発達障害児について全教員が豊富な知識を持って正しい対応ができているかどうかも疑問です。

教育現場の体制が一気に変わるわけではありませんので、誰もが学びやすいユニバーサルな通常学級の実現までには、まだまだ遠い道のりがあります。この法律ができたことで安心するのではなく、「通常学級に入れることはどんなことなのか」を親がしっかり把握しておかなくてはならないと思います。

生徒数も多い通常学級で、発達障害のある我が子は大丈夫?親が気をつけたい3つのポイント

発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイントの画像
イラスト: 今井久恵, すばる舎
Upload By 立石美津子
文部科学省の規定で、小学校の1年生の人数は一クラス35名となっています。2年生からは40名。非常勤のスタッフが加配という形で人員が多くなることもありますが、基本、教師1名:生徒40名が通常学級です。

担任教師は、学習指導要領のカリキュラムに沿って授業を行っています。乱暴な言い方ですが、生徒がわかっていようといまいと、「学期終わりの翌年3月までには○○の単元まで」と、授業を進めなくてはならないわけです。

また、通常学級では特別支援学校とは異なり、障害のある児童それぞれの特性や課題に合わせた、「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」の作成義務はありません。
発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイントの画像
Upload By 立石美津子
専門性もあり熱心な先生が自主的に指導計画・支援計画を作成してくれることも無くはないですが、未だ多くの通常学級では、十分な個別の対応を期待することは難しいと思います。通級制度や特別支援教室を週に何回か利用するという形で支援を受けるのが現実的でしょう。(*特別支援教室は東京都で平成28年度から順次取り入れている制度)

こうした前提を踏まえて、「うちの子は通常学級でがんばれそうかな?」と悩んでいる保護者の方に向けて、通常学級で適応できるかどうかの見極めポイントを3つご紹介します。

45分、落ち着いて座っていられるか?

発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイントの画像
イラスト: 今井久恵, すばる舎
Upload By 立石美津子
小学校の授業は1コマ45分です。つまり、45分間は席に着いて机上での勉強に集中できること、さらに教師の指示に従い、集団行動がとれることが前提となってきます。

これらができないと、叱られる回数が増えたり、他の生徒達からも奇異の目で見られたりして、子どもの自己肯定感が下がってしまうおそれがあります。

これが難しい場合は、加配の支援員を付けてもらえるよう相談する、通級や支援級の利用も視野に入れる、学校の外で療育に通うなどして、子ども自身のスキル獲得を支援する、などの手段も考慮に入れてみてください。

一方、教室を脱走するなどの積極奇異型ではない受動型の発達障害の子の場合、椅子にじっと座ってはいられますが、座っていてもファンタジーの世界に没頭して、まったく授業を聞いていない場合もあります。

このタイプの子どもは、教師にとっては扱いやすい子どもではありますが、放置されるおそれもあります。

授業内容を理解できているかどうかを保護者の方でも注意しながら、担任や支援員にも、意識的に気にかけてもらえるよう働きかけることが重要です。

9歳の壁を乗り越えられるか?

小学校の授業内容は、3年生から急に難しくなります。

1、2年生のうちは、機械的な計算問題や漢字の書き取りが中心になるので、まだ何とかついていけていても、抽象的な思考・理解が求められる単元が入ってくる3年生以降でつまずく子がいます。

学習面のつまづきに関しては、小学校入学時だけでなく、3年生に上がる時期の「9歳の壁」にぶつかっていないか注意してみることが大切です。

友達とうまくコミュニケーションがとれるか?

幼稚園、保育園時代はまだ周りの友達も幼児です。“みんな仲良し”が通用します。
けれども、小学生になると友達関係が複雑化します。グループを作ったり秘密を持ったりします。

勉強はなんとかなってもコミュニケーションがうまくとれない、相手との距離感がわからないなどで、仲間外れになり、いじめのターゲットとなることもあります。

通級指導教室や、学外の放課後等デイサービスを利用してソーシャルスキルトレーニングを受けるなど、その子の対人関係を支援する方法を考えましょう。
障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめのタイトル画像
関連記事
障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ

通常学級が学級崩壊状態になったとき、親としてどうすれば良いか?

発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイントの画像
イラスト: 今井久恵, すばる舎
Upload By 立石美津子
授業参観に行くと、3~4名の子どもがウロウロ席を立ち、授業自体が成り立たずに学級崩壊している光景を、目にすることがあります。

もちろん、教師の指導力の問題や家庭の躾が原因のこともありますが、少なからず、発達障害児と呼ばれる子ども達が一定のパーセンテージいます。そして、教師がどんなに努力してもクラスがまとまらない状況になっていることがあります。

担任教師は自分の無力さを感じ、保護者からクレームを受け、責任感に押し潰され、ストレスを溜め鬱病になり、辞めていく…。そんなケースもあります。

「教員数、担任のスキル不足でグレーゾーンの子どもの対応が通常級の中でうまくできない」
「特別支援学級に在籍して、手厚い指導を受けた方がよい、知的な遅れのある子どもが通常学級にいる」
「食事、トイレなどの身辺自立が難しい重度の子どもが特別支援学級にいる」

などなど…学校側と子ども・家庭側のスキルや要望のミスマッチが重なっていくと、学校現場は混乱してしまいます。

学校選びは原則、親の意向が優先されます。親側の「こういうクラスで過ごさせたい」の思いだけでなく「我が子にとって適切な教育環境かどうか」を念頭に、公開授業や授業見学日に足しげく通い、客観的に観察する目を持ちましょう。

通常学級での環境整備は、保護者からの働きかけも大切

発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイントの画像
イラスト: 今井久恵, すばる舎
Upload By 立石美津子
通常学級では、個別の指導計画や個別の教育支援計画書の作成義務も無く、担任は特別支援教育の有資格者ではありません。

お子さんの発達が気になるご家庭で、通常学級への就学を考える場合は、子どもが少しでも過ごしやすい環境を整えるため、保護者自身が子どもの特性を理解し、学校の先生への説明・相談を丁寧に行うことが大切だと思います。

この記事を書いた人の著書

立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子(著),市川宏伸(監修)
障害のある子の「個別カルテ」ってどういうこと?文科省に聞いてみたのタイトル画像
関連記事
障害のある子の「個別カルテ」ってどういうこと?文科省に聞いてみた
普通級?それとも支援級?子どもの人生の節目を前に、親ができることのタイトル画像
関連記事
普通級?それとも支援級?子どもの人生の節目を前に、親ができること
就学先を決める就学相談を徹底解説!通常級・通級・支援級・支援学校、子どもに合った進学先はどこ?のタイトル画像
関連記事
就学先を決める就学相談を徹底解説!通常級・通級・支援級・支援学校、子どもに合った進学先はどこ?
特別支援学級を徹底解説!障害ごとの教育内容から卒業後の進路までのタイトル画像
関連記事
特別支援学級を徹底解説!障害ごとの教育内容から卒業後の進路まで
当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。

TA-kun さん
2017/02/09 09:03
9歳の壁…これからですが不安です。
お友達関係も変わってくるのかな…

あかちゃん さん
2016/12/08 21:45
環境を整えるのは現状、やはり親なんだと思います。もちろん進んでいる地域・人もあると思いますが、家庭も学校もより良い環境を求めるべきではないかと。
ただ、学年上がるにつれ自主性が芽生えてきたと共に、親が意識して手を離すことは絶対必要だと思います。
子供の自主性の芽生えを摘まないようにしたいです。

Avatar11
Column title

あわせて読みたい関連記事

インクルーシブ教育とは?その考え方や背景、具体的な取組み、課題点についてまとめました。のタイトル画像

インクルーシブ教育とは?その考え方や背景、具体的な取組み、課題点についてまとめました。

インクルーシブとは、「包括的な」「包み込む」という意味です。インクルーシブ教育の導入により、就学先決定の仕組みや、通常学級で障害のある子ど...
進学・学校生活
85548 view
2016/09/20 更新
通級指導教室とは?対象は?通級による指導の内容や通い方、ほかの特別支援教育との違いを紹介しますのタイトル画像

通級指導教室とは?対象は?通級による指導の内容や通い方、ほかの特別支援教育との違いを紹介します

通級による指導は小・中学校の通常学級に在籍する障害のある児童の特性に合わせた個別の指導です。保護者にとって、子どもの就学先選びは非常に大き...
進学・学校生活
53047 view
2017/04/29 更新
特別支援学級を徹底解説!障害ごとの教育内容から卒業後の進路までのタイトル画像

特別支援学級を徹底解説!障害ごとの教育内容から卒業後の進路まで

通常の学級、特別支援学級や通級指導教室、支援学校などの様々な選択肢から、お子さんの就学先を選ぶことに悩む保護者の方は多いのではないでしょう...
進学・学校生活
243358 view
2016/08/14 更新
発達障害の子どもが通常学級に進級する場合、先生やママ友に伝えておくべきことは?のタイトル画像

発達障害の子どもが通常学級に進級する場合、先生やママ友に伝えておくべきことは?

知的発達に遅れがない発達障害の子どもの場合、通常学級への在籍を選ぶご家庭も少なくないでしょう。近年では通級による取り出し指導も充実してきて...
進学・学校生活
70493 view
2016/11/21 更新
特別支援教室とは?どんな制度?通級との違いは?特別支援教室を徹底解説します!のタイトル画像

特別支援教室とは?どんな制度?通級との違いは?特別支援教室を徹底解説します!

特別支援教室は、インクルーシブ教育を推進するために今後導入される制度で、おおむね通級による指導を置き換える制度です。2017年現在、東京都...
進学・学校生活
28555 view
2017/03/30 更新

この記事を書いた人

立石美津子 さんが書いた記事

私が自閉症の息子を冠婚葬祭に出席させたいと願う理由。初めての結婚式を経験して…のタイトル画像

私が自閉症の息子を冠婚葬祭に出席させたいと願う理由。初めての結婚式を経験して…

友達の結婚式に親子で呼ばれたときや、親族のお葬式に行かなくてはならないとき。 障害のあるわが子を参列させるかどうか、他人への迷惑を考えてた...
自分と家族のこと
6385 view
2017/10/01 更新
「相手の気持ちをよく考えて」その言い方は子どもに届かない!?「心の理論」から考える声掛けの方法のタイトル画像

「相手の気持ちをよく考えて」その言い方は子どもに届かない!?「心の理論」から考える声掛けの方法

公園の砂場で玩具の取り合いが始まると、親が出てきて「自分がされて嫌なことはお友達にしないで」「相手の気持ちをよく考えて」と言葉をかけている...
自分と家族のこと
16439 view
2017/09/11 更新
脳は「走るな!騒ぐな!」を理解しずらい!声掛けのコツは「トイレの貼り紙」にあった!のタイトル画像

脳は「走るな!騒ぐな!」を理解しずらい!声掛けのコツは「トイレの貼り紙」にあった!

「子どもには否定形を使わないで、肯定形でしつけましょう」とよく言われます。それは“否定形で言われたら“不愉快になる”“反発したくなる”だけ...
身のまわりのこと
20957 view
2017/08/20 更新
「みんなと同じになってほしい」親の都合で子どもの幸せを考えていませんか?のタイトル画像

「みんなと同じになってほしい」親の都合で子どもの幸せを考えていませんか?

親となったとき誰しも願うこと。それは「この子が幸せな人生を歩んでいきますように」ということではないでしょうか。 ところが、無意識のうちに...
自分と家族のこと
13413 view
2017/07/28 更新
お金も心も救われた障害者保険。自閉症の息子が見舞われたトラブルに…のタイトル画像

お金も心も救われた障害者保険。自閉症の息子が見舞われたトラブルに…

皆さんのお子さんには他害がありますか?それとも自傷がありますか?息子は自傷タイプなので「器物破損をするようなことは、これからの人生でないだ...
自分と家族のこと
17051 view
2017/07/07 更新
コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。