自閉症息子との帰省!長距離バスで奇声、癇癪どうする?離れて暮らす祖父母の理解は?関わり方のコツも

ライター:みん
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ようやくコロナも落ち着いてきて、子どもたちを連れて実家に帰省ができるようになりました。
とはいえ、知的障害を伴う自閉症のある息子を連れての帰省は何かと大変です!
今回はそんなわが家の帰省の話をしたいと思います。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

公共交通機関を利用するときに気をつけていることは?

自宅から、私の実家までは車で片道3〜4時間ほどかかります。
車で帰るときはまだ良いのですが、たまに高速バスを利用することもあります。

Pを連れて公共の乗り物、しかも、乗車時間が長く、自由に途中下車ができない高速バスに乗るのは、トイレの問題や、癇癪や奇声の問題などがあり、かなりハードルが高いです。トイレの問題については、突然行きたがることもあるので、小さいころは無理をせずにおむつを履かせ、大きくなった今はバスにトイレがついているか?を必ずバス会社に尋ねています。また、癇癪や奇声の問題については、とっておきのお菓子や玩具などを私の鞄の中に潜ませておいて、いざというときにはそれらを出して、Pの気を紛らわすようにしていました。P自身の経験のため、慣れるためにもできるだけバスでの帰省に挑戦しています。

チケットを予約するときは、「療育手帳の提示で割引運賃が適用される」という理由もありますが、子どもに障害があることを必ず伝え、バスに乗車するときも同じように運転手さんに伝えています。
乗り物が大好きなPは、基本的には大きな問題もなく長時間座ってはいられるのですが、たまに楽しくなって奇声を発することもあるので、場合によっては周囲の人たちに「この子には障害があって、途中騒がしいこともあるかもしれませんが…」と前もってひとこと伝えるようにしています。やはり、何人かに知っておいてもらうだけでもバスで過ごすときの気持ちが全く違ってきます。
長距離バスで帰省するときには、息子に知的障害と自閉スペクトラム症があることを前もってバス会社や運転手さんに説明しておく。また、周囲に乗り合わせた人にも必要に応じて伝えるようにしている。
バスに乗るときに気をつけていること
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慣れない環境でどう過ごす?祖父母に理解してもらうには?

そして実家に到着してからの話ですが、私の父と母はPの障害のことを理解はしてくれているのですが、普段一緒に過ごしていないのでPの行動に対してびっくりしたり戸惑ったりすることもありますし、逆にこちらも自分たちが普段生活していない場所でお世話になるので、Pにとって危険な物がすぐ手の届く場所にあったり、執着やこだわりにつながるような物も目につく場所にあったりします。
血がつながった家族とはいえ、お互いの生活ペースにお互いが合わせるのはやはり大変です。でも少しでもお互いが快適に過ごせるように、きちんと話し合い、なぜPはこのような行動をとるのか?をその都度説明し、隠せる物は隠したり、逆にこちらが距離を取るようにしたりしながら、Pの癇癪や問題行動をできる限り減らすようにしています。

そんなPですが、帰省したときは主に屋外で遊んで過ごし、実家にある池に石や草をたくさん投げ込んでしまいます。いくら外の池でも、荒らしてしまってばかりでは申し訳ないので、私はPの遊びを見守りながら、庭の草むしりや掃除をし、荒らしてしまった以上に綺麗にするように心がけています。
「親しき仲にも礼儀あり」という言葉がありますが、孫がしたこととはいえ実家を散らかしたり汚したり壊したりなど、何か迷惑をかけてしまったのなら、できるだけ原状回復するようにし、何かほかの形でも返したりしながら、自由に遊ばせてもらえてありがたい気持ちと、散らかしてしまって申し訳ない気持ちが両親に伝われば良いなと思っています。
実家に帰省した際に、知的障害を伴う自閉症のある息子Pは池に石などを投げ込むことがあるので「楽しそうに遊んでいるけど、池が荒れてしまうな…」と心配する母。荒らしてしまう分、草抜きなどをして、来たときよりもきれいにして帰るよう心がけている。
帰省したら心がけていること
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離れて暮らしているからこそ大切にしたいこと

こんな風に過ごすことで、お互いに「また来てね!」「また帰るね!」と言えるような関係でいられたら良いなと思っています。
帰省は疲れることも大変なこともいろいろありますが、私と両親が一緒にPを見守りながら、お互いの心配に思っていること、不安に思っていることなどを話し合い、Pの障害について説明し理解へと繋げることは、とても大切だと思っています。
実家の両親に対しても、「〇〇するとパニックになるかもしれないからね」と、自閉スペクトラム症と知的障害のある息子の特性について伝え、理解してもらえるようにすることが大切。
話し合うことが大切
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執筆/みん
(監修:鈴木先生より)
バスなどの公共交通機関を利用する際に、あらかじめ障害のあることを周囲の人に伝えるのはいいことですが、中にはASD傾向があって音過敏の方もいらっしゃるかもしれません。そういう方は自分で予めイヤホンなど持参して自衛の策を講じているかと思いますが、すべての乗客が障害に対して理解があるとも限らないので、とにかく保護者が謝るしかない…というご経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。公共の場では最低限のマナーが必要とされ、保護者がわが子の行動をカバーすることも世間では求められます。神経発達症に関してはまだまだ世間に浸透していないのが現実です。今後の学校教育の中で性教育と同様に神経発達症に関しても教えていく必要があると常々思っています。
また、みんさんのように、たとえご実家のご両親に対してであっても、感謝の気持ちを行動で示すことは、理解を得るうえで重要だと思います。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。


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