中学生で学力は小3止まり、トラブル続きの原因は発達障害!?父は号泣、母の反応は…?夫婦で向き合った結果

ライター:ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
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発達障害とは生まれつき脳機能の発達のアンバランスや周りの環境とのミスマッチから、社会生活に困難が生じる障害のこと。こちらでは中学で発達障害に気づいた体験談を専門家の解説と共にご紹介します。

わが家は10人家族です。母である私・ワッシーナを筆頭に、家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。
いまは社会人5年目になる、おっとりキャラの次男ウッシーヤの中学生のころをふりかえります。(今回のイラストは父ラクマが担当しました!)

監修者井上雅彦のアイコン
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

発達障害とは?中学生になって気づくこともある?

発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスや周りの環境とのミスマッチから、社会生活に困難が生じる障害のことです。ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)などが発達障害に含まれます。

また発達障害は見た目からは分かりづらく誤解を生みやすいことも問題です。本人は悪気がなくても、「衝動的でわがままだ」「人の話を聞かない」「変わった人だ」などと思われたり、「本人の努力不足」や「親のしつけが悪い」などと誤ってとらえられることも少なくありません。

本人と周囲の人がお互いの違いを理解しつつ、発達障害ゆえの困難さが起こりにくくなるように環境を調整し、本人の得意な行動や特性を生かした過ごし方ができるような支援を継続することが大切です。

発達障害に気づきやすいのはいつ?中学生になって気づくこともあるの?

発達障害特性が目立ってくる時期は、障害のタイプによっても異なります。

・知的障害(知的発達症)
就学前に気づかれやすい傾向があります
・ASD(自閉スペクトラム症)
幼稚園や保育園、また就学後、集団でのルール、対人関係の複雑化の中で融通のきかなさや、マイペースな行動、強いこだわり、感覚の過敏性や鈍麻などによって、気づかれることがあります
・ADHD(注意欠如多動症)
就学後落ち着いて授業が受けることができない、忘れ物が多いなどがきっかけで気づかれやすくなります。文部科学省の定義では7歳前、DSM-5-TRによると12歳前に症状があらわれるとされています
・LD・SLD(限局性学習症)
就学後、特定の科目が苦手だったり、読み書きや計算に困難がある場合に気づかれることが多いです

また、困りごとは個人によって大きく異なります。上記のような時期に気づかれず、中学生、高校生になってから発達障害だと分かるケースも多々存在します。
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
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以下では、中学生になり発達障害について気づいた実際の体験談をご紹介します。専門家のコメントと併せて是非御覧ください。

中学生になったウッシーヤは問題続出

いまからおよそ13年前の、次男ウッシーヤが中学生のときのエピソードです。わが家は家系的に第二次成長期がゆっくりおとずれるようで、だいたい高校以降です。現在は大柄なウッシーヤも、中学1年生のころは小柄なほうでした。

中学生になったウッシーヤは、まだ指しゃぶりもあり、学力は小学3年生レベルのまま足ぶみが続いており、周囲との差が開いていく一方でした。
教育センターでの面談の結果、専門家から「次男ウッシーヤ君は発達障害かもしれない」と告げられ、驚く母
教育センターで発達障害の可能性を知る
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学校での面談で専門家に相談することに

ウッシーヤは中学1年生の秋に、学校を揺るがす大事件を起こしてしまいました。私は、子育てが悪いのでは、もっと厳しくしつけるべきだったのでは、と思い悩み自分を責めていました。

担任と校長先生を交えて相談した結果、専門家の力を借りるのがいいだろうということに決まりました。

学校から紹介された教育センターの専門家と面談したところ、「アスペルガー症候群(※今でいう自閉スペクトラム症)かもしれない」と告げられました。驚きつつも、いただいた資料を読むと心あたりのある症状が90パーセント以上ありました。

さらに資料を取り寄せて読みこむと、ウッシーヤにはほかにも発達凸凹の特性があることが分かってきました。さらに、わが家のほかの子どもたちにも発達凸凹の特性があることに気がつきました。ずいぶん気づくのが遅れましたが、当時は情報や支援が現在ほど充実していませんでした。

特に夫ラクマはかなりショックを受け、発達障害の可能性があると知ってから3日間、一睡もせず資料を読んでいました。しかも、その間中泣いているのです。

資料にある内容があまりにもわが家の子どもたちに当てはまる上に、子どもたちを追い込んで学校や職場でトラブルが絶えないのは父親である自分の責任だと強く感じていたのでした。

周囲の友人たちからは「ラクマ家で誰か不幸があったのか?」と心配されたほどでした。でも私はこれまでの問題の原因がはっきりと分かり、しかもこれが子育てが悪いためではないと知ってホッとしました。
わが子が発達障害かもしれないと知り、「かわいそう」と涙を流す父と、「やっぱり」と安心する母。夫婦で正反対の反応
夫婦で正反対の反応
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専門家からの告知で子育ての方向転換

教育センターでの面談から3ヶ月ほど待って、ようやく発達外来を受診することができました。なにごとにもマメな性格のラクマは、これまでのいきさつをパソコンでまとめて病院に提出しました。

すると担当医から「ウッシーヤ君は本当に発達障害なのかは分からない」と言われ、ものすごく驚きました。しかし、担当医は続けて「診断は出せると思うが、(検査などで)時間はかかる。(診断が出れば)お子さんの状況によっては薬の処方も可能になる」と説明しました。

いま思えば、当時の担当医もまだ発達障害に関する知識が乏しかったのだと思います。のちに調べてみると、たしかに発達障害はその原因やメカニズムが医学的にまだ不明な部分も多いこと、診断が難しいこと、さまざまな要因があり、必ずしも遺伝するものではないことなどが分かってきました。

病院での診察を終え、自宅に戻って夫婦でこれからのことを話し合いました。結果として医療のみではなく、何か別の方法も探してみようということになりました。

というのは、ほぼ同じころ、仕事上の悩みを抱えていた長女ニャーイを心療内科に連れていったところ、「うつ病」と診断されました。薬を処方され、その後半年間、休職して自宅療養しましたが、処方された薬が合わなかったのか、何度か命の危険すら感じることもありました。

すでに成人したニャーイにこれほど薬が合わないなら、まだ中学生のウッシーヤはどうなるのかという不安があったのです。
「勉強のしかたも工夫しようね」と次男に声を掛ける母。ボードや参考書による視覚支援を活用しながら母子で勉強する
ボードや参考書で勉強する母子
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資料で見つけた工夫をあれこれ試す

ウッシーヤには資料で見つけた工夫を重ねました。その中で一番うまくいっていまも使っているのが、わが家で「ボード」と呼んでいる工夫です。

マグネット式のボードとカードを用意して、やるべきことを書いて並べて、やり終えるとひっくり返します。すると「できた!」という文字が現れます。

勉強で使うファイルは教科ごとに色分けしたり、学習机は引き出しにプレートを貼ったりして、中身がすぐに分かるように工夫しました。

また書店をまわってグレーゾーン向けの参考書を購入して、ウッシーヤに使わせてみました。すると、少しずつ理解が進むようになりました。グレーゾーン向けの参考書は例えば、一番つまずいていた繰り上がりの計算の考え方が視覚的に分かりやすく説明されていたりしました。

また、私の同僚のアメリカ人教師から「文章を読むときはモノサシを当てて読むといい」と教わりました。実際やってみると、とてもうまくいきました。
夫婦で受講したペアレントトレーニングの復習で、母が「アニメに夢中な次男」の役、父が「静かに近づいて声かけをする」役になり、自宅にてロールプレイをしている様子
ペアトレの復習で自宅にてロールプレイをした
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療育施設でトレーニングを受ける

そのうち家庭内での工夫だけではなく、専門家からの支援が必要だと感じるようになりました。

同じ市内に発達障害のある人の支援に関して実績のある療育施設を見つけ、ウッシーヤの発達相談で通っていたのですが、そのうちに夫婦でペアレント・トレーニング(ペアトレ)を受講することになりました。

そのころ、子育ての一番の悩みは、ウッシーヤの動きが極端に遅いことでした。お風呂やトイレに入ると何時間でも出てこないし、アニメを見たり、生き物の観察をやり始めると何時間もやめませんでした。

ペアトレでは、アニメ視聴をやめさせて次の動きを促すことをテーマにしてトレーニングを行いました。

具体的な声かけの仕方から、注目の集め方、相手との距離、そのくり返し方など、かんたんな台本を作って、実際にやってみるのです。
とくに重要なのが「まるで外国人になったみたいに、なるべくオーバーにほめましょう」ということでした。

わが家の子どもたちはみな中学生以上で、すでに成人している子どもや大人なみの体格になっている子どもがほとんどなのに、オーバーにほめるなんて恥ずかしいと思いました。

でもトレーナーさんは「お子さんをほめるんじゃないですよ。行動をほめるんですよ」とアドバイスしてくれました。私はそれならできるかもと思い、自宅にもどってやってみました。

すると末っ子のウッシーヤは効果がすぐ現れました。すでに成人したほかの子どもたちにもやってみましたが、やはり効果があり、とても驚きました。
次男への対応がひいきだと怒る次女に対し、「ひいきじゃなくて支援というものなのよ」とペアレントトレーニングについて説明する母
ひいきと誤解し怒る次女
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工夫プラス周囲への説明が大事

この工夫は、一番動きのにぶい次男に向けて行うことが多かったので、問題のあまりないほかの子どもたちが怒りだしました。

「できない子をほめるのはおかしい。子育てが間違っている。弟をダメにしたのは親の教育が悪いせいだ」という主張です。

そこで私と夫はペアトレの資料を引っ張り出してきて、なるべく丁寧に説明しました。

ペアトレは結果が出るのに時間はかかるかもしれないが国際的に実績のあるトレーニングであることを伝えていきました。発達凸凹の子育ては、当事者に対する工夫だけでなく、周囲の人々の理解を得るための説明も同じくらい大切なのだと実感しました。

ペアトレが少しずつ結果を出してきたので、続いてストレス・マネジメント講座を受講しました。これで発達凸凹の子育てと家庭生活と仕事のバランスをうまくとる工夫ができました。
次男の通うインターナショナル系のフリースクールに講師として採用された母。学校でも家庭内での工夫を活かせるようになる。笑顔で教壇に立つ母に困惑する次男
教壇に立つ母、困る次男
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見張るつもりでフリースクール教師に

家庭内で工夫を重ねるうちに、学校でも同じ工夫を行えば効果はもっとあがるだろうということに気がつきました。

ちょうどそのとき、子どもたちの通うインターナショナル系のフリースクールで教師を募集したので応募し、採用されました。

学校の職員研修でペアトレを提案すると採用されたので、わが家が受けたトレーニングを全スタッフで受講することができました。そのため家庭内で行なっている工夫を学校に紹介しやすくなりました。家庭と学校で連動して行なった工夫のくわしい内容は、別の話題のときにご紹介します。
農業に興味がある次男のために、知り合いの農家に頼み父子で収穫ボランティア体験をする様子
農家での収穫ボランティア体験
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あれこれ根回しして社会体験を重ねる

小学校高学年から親子で行っていたボランティア活動などの社会体験を、もっと就労を意識したものに変えていきました。

ウッシーヤが野菜を育てたいと言うと、知人の農家に頼んで、収穫体験をさせてもらいました。将来は動物園で働きたいと聞くと豆記者として動物園を取材しました。本人がアルバイトをしたがると、知人に頼んで草刈りや洗車のアルバイトを一緒にしました。これらの社会体験は主に夫が同行してくれました。

その後、私の母のすすめで母が勤務する保育園で、夏休みに次女リスミーとウッシーヤの2人がボランティア体験をしました。初回は次女リスミーとウッシーヤの2人で参加しました。ところが、ウッシーヤはよほど楽しかったようで、残りの休み期間の間中、ボランティアに通いつめました。

しかも、ウッシーヤは通うほどにますます保育園での活動にはまりました。その後は長期休暇のたびに10年間も同じ保育園に通いつめるようになりました。

執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
(監修:井上先生より)
発達障害に気づかれたあと、ご夫婦でそのことについて学ばれ、子どもさんと一緒にさまざまな工夫や活動をされてきたことは、親御さんにとっても子どもさんにとってもとても得難い体験となっているのではないでしょうか。特に、ボランティア体験をお父さんと一緒に何種類も行われたことはすごいことだと思います。将来の就労に向かって実際に体験したことはお子さんにとって大きな財産になると思います。またきょうだいに対して納得できるような丁寧な説明も、大切だと思います。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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