「なぜ?」に着目!癇癪が起きる仕組みと影響しやすい3つの要因を作業療法士・野田遥さんが解説!
ライター:LITALICO発達特性検査 編集部
子育ての悩みとして、癇癪をあげる保護者の方が多いようです。特に発達の特性が関係している場合 、対応が難しいこともあるかもしれません。そのような場合には「なぜ癇癪が起きるのか?」に着目することで、解決へのヒントが見つかるかもしれません。
今回は作業療法士の野田遥さんのオンラインセミナーでの癇癪についての講義内容を再構成して、癇癪が起きる仕組みと影響する3つの要因についてお伝えします。(取材・構成/LITALICO発達特性検査編集部)
監修: 野田遥
作業療法士
LITALICO研究所 研究員
作業療法士として教育センターや障害児入所施設等で勤務したのち、現在は自閉スペクトラム症者の感覚処理に関する研究や、発達障害に関連したプロダクトの研究・開発に取り組んでいる。
LITALICO研究所 研究員
癇癪の対応は難しい
作業療法士の野田遥です。LITALICO発達特性検査の研究・開発に携わっています。
今回は、2024年の夏に行ったLITALICO発達特性検査のオンラインセミナーでの講義内容から、特に保護者の方の関心の高かった癇癪(かんしゃく)について、講義内容を再構成して詳しくご紹介します。
イベントの内容やLITALICO発達特性検査について、詳しく知りたい方は以下の記事を併せてお読みください。
今回は、2024年の夏に行ったLITALICO発達特性検査のオンラインセミナーでの講義内容から、特に保護者の方の関心の高かった癇癪(かんしゃく)について、講義内容を再構成して詳しくご紹介します。
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イベントレポート「お子さまの困りごとはどうして起きる?」 背景に着目してサポートを考える方法を作業療法士・野田遥さんに聞きました
LITALICO発達特性検査とは。特徴、対象、検査で分かること、受検方法などを解説
保護者にとって癇癪の悩みは大きい
今回開催したオンラインセミナーでは、保護者の方の子育てに関するお悩みや、お子さまの困りについてをテーマに取り上げました。なかでも、事前の質問や当日の質疑応答では、癇癪に関するお悩みがたくさん寄せられました。お子さまの癇癪について悩まれる方が多く、またその困っている度合いも強いのだろうなと実感しました。
まず前提として、癇癪への対応は簡単ではないと感じています。
ご自宅だけでなくて、園や学校、外出先で困った経験のある保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日々の中で、お子さまの癇癪が繰り返し起きると、全てにうまく対応するのはとても難しいです。仮に周りから「こうしたらいいよ」などと言われても、そう簡単に実践できないこともあるでしょうし、試してもうまくいかない場面が多いかもしれません。結果として、対応する保護者の方も、気持ちをうまく処理できなかったり、怒りがちになったりすることもあるでしょう。
また、お子さまの癇癪について、癇癪の程度や頻度が高く特別なサポートや対応が必要なものなのか、それとも成長の過程で必要な一過性なものなのかなど、判断に悩む方もいらっしゃると思います。
そのような場合、癇癪がなぜ起きているかに着目することで、対応のヒントが得られるかもしれません。今回は、癇癪が起きるメカニズムと癇癪に影響しやすい要因などについてお伝えします。癇癪についての理解を深め、対応方法を考える一助になれば幸いです。
まず前提として、癇癪への対応は簡単ではないと感じています。
ご自宅だけでなくて、園や学校、外出先で困った経験のある保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日々の中で、お子さまの癇癪が繰り返し起きると、全てにうまく対応するのはとても難しいです。仮に周りから「こうしたらいいよ」などと言われても、そう簡単に実践できないこともあるでしょうし、試してもうまくいかない場面が多いかもしれません。結果として、対応する保護者の方も、気持ちをうまく処理できなかったり、怒りがちになったりすることもあるでしょう。
また、お子さまの癇癪について、癇癪の程度や頻度が高く特別なサポートや対応が必要なものなのか、それとも成長の過程で必要な一過性なものなのかなど、判断に悩む方もいらっしゃると思います。
そのような場合、癇癪がなぜ起きているかに着目することで、対応のヒントが得られるかもしれません。今回は、癇癪が起きるメカニズムと癇癪に影響しやすい要因などについてお伝えします。癇癪についての理解を深め、対応方法を考える一助になれば幸いです。
癇癪とは
はじめに、癇癪とはどういう状態を指すのか整理します。
ここでは、怒りや不安、欲求不満などの感情によって、気持ちや行動のコントロールがうまくできなくなった状況のことを癇癪と呼ぶこととします。
◾️癇癪が起きた際の行動例
・声を荒げて泣く
・激しく奇声を発する
・手足をバタバタする
・床に寝転がる
・ものを投げる
・足を踏み鳴らす など
ここでは、怒りや不安、欲求不満などの感情によって、気持ちや行動のコントロールがうまくできなくなった状況のことを癇癪と呼ぶこととします。
◾️癇癪が起きた際の行動例
・声を荒げて泣く
・激しく奇声を発する
・手足をバタバタする
・床に寝転がる
・ものを投げる
・足を踏み鳴らす など
癇癪の仕組み
まず始めに伝えたいのは、興奮しているときには癇癪が引き起こされやすいということです。
興奮のレベルは常に変動しています。興奮のレベルが高い状態から寝起きのような低い状態まで、同じ人でも常に変動していて波があります。重要なのは、この波の振れ幅や繰り返しのスパンには個人差があるということです。強い興奮が起きやすかったり、頻繁に興奮のレベルが変わったりする人がいるということです。
なぜ、興奮状態に癇癪が起きやすいかというと、興奮して感情的になっているときには普段できることもできなくなるからです。いつもは優しい口調で話せているのに、疲れてイライラしている時には意図せず強い口調になってしまうことは、誰もが経験することではないでしょうか。
コミュニケーションの複雑さという観点で考えると、叩く・叫ぶというのは比較的単純な方法です。発達するにつれて、以下の図のように単語で伝える、短文で伝えるなどレベルが上がっていって、最終的には交渉するといった複雑なコミュニケーションができるようになっていくわけです。
お子さまによって習得状況は違うと思うのですが、例えば、普段だったら「やりたくない」と口頭で意見を言えているのに、興奮状態の場合はその複雑なコミュニケーションができず、より容易な手段である「叩いて拒否する」、「泣き叫ぶ」という行動しか取れない場面があるかもしれません。
普段できる行動が取れなくなりとった行動が、結果的に「癇癪」だったのかもしれません。
このように、興奮と癇癪に関連性があると捉えると、興奮しやすい状況を把握し、興奮に至る前にクールダウンするなど、興奮の波のサインを把握して対応するということが、癇癪を引き起こさないために重要になってきます。
お子さまにどのような興奮の波があって、どういうタイミングに興奮状態が起こりやすいか、ということを知ることで、癇癪へのアプローチの手段が増えてくるのではないかと思います。
興奮のレベルは常に変動しています。興奮のレベルが高い状態から寝起きのような低い状態まで、同じ人でも常に変動していて波があります。重要なのは、この波の振れ幅や繰り返しのスパンには個人差があるということです。強い興奮が起きやすかったり、頻繁に興奮のレベルが変わったりする人がいるということです。
なぜ、興奮状態に癇癪が起きやすいかというと、興奮して感情的になっているときには普段できることもできなくなるからです。いつもは優しい口調で話せているのに、疲れてイライラしている時には意図せず強い口調になってしまうことは、誰もが経験することではないでしょうか。
コミュニケーションの複雑さという観点で考えると、叩く・叫ぶというのは比較的単純な方法です。発達するにつれて、以下の図のように単語で伝える、短文で伝えるなどレベルが上がっていって、最終的には交渉するといった複雑なコミュニケーションができるようになっていくわけです。
お子さまによって習得状況は違うと思うのですが、例えば、普段だったら「やりたくない」と口頭で意見を言えているのに、興奮状態の場合はその複雑なコミュニケーションができず、より容易な手段である「叩いて拒否する」、「泣き叫ぶ」という行動しか取れない場面があるかもしれません。
普段できる行動が取れなくなりとった行動が、結果的に「癇癪」だったのかもしれません。
このように、興奮と癇癪に関連性があると捉えると、興奮しやすい状況を把握し、興奮に至る前にクールダウンするなど、興奮の波のサインを把握して対応するということが、癇癪を引き起こさないために重要になってきます。
お子さまにどのような興奮の波があって、どういうタイミングに興奮状態が起こりやすいか、ということを知ることで、癇癪へのアプローチの手段が増えてくるのではないかと思います。
癇癪はなぜ起きるの?影響しやすい3つの要因
癇癪がコミュニケーションに用いられてしまうのはなぜか?ということについて、押さえておきたい観点が3つあります。
【要因1】興奮と癇癪のメカニズムの関係
どうして癇癪が起きるのかというと、大きな理由の一つとして、要求を伝え、叶えるためのコミュニケーションの難しさがあげられます。
誰もが小さい頃は癇癪のような行動をしていたと思います。
例えば赤ちゃんは、生理的な不快がある時、泣きます。赤ちゃんには不快という状況に対して反応する方法がほかにないので、泣くことで示します。癇癪も同じで、不快だという感情を伝えるための手段として泣いたり、行動の形で示すことを機能としています。
ほかに訴える方法がなく、泣くことや癇癪で要求を伝えていたお子さまも、年齢が上がってくるにつれて、ほかのコミュニケーション手段が増えていくため、結果として癇癪が減る場合が多いのです。
一方で、うまく伝える方法がなかったり、気持ちのコントロールが難しかったりする場合には、癇癪を継続したり頻度や激しさが高まる場合があるかもしれません。ただし、年齢が小さい時とは、コミュニケーション手段としての使い方や意味合いが変わってきている場合があります。
単に不快さを伝えるシンプルな意味から、「お菓子が欲しいから」「遊びをやめたくないから」「その場所に行きたくないから」といったように、何かを獲得するため・嫌なことを回避するためといった、複数の意味を持つコミュニケーション手段として癇癪が使われている可能性があります。
誰もが小さい頃は癇癪のような行動をしていたと思います。
例えば赤ちゃんは、生理的な不快がある時、泣きます。赤ちゃんには不快という状況に対して反応する方法がほかにないので、泣くことで示します。癇癪も同じで、不快だという感情を伝えるための手段として泣いたり、行動の形で示すことを機能としています。
ほかに訴える方法がなく、泣くことや癇癪で要求を伝えていたお子さまも、年齢が上がってくるにつれて、ほかのコミュニケーション手段が増えていくため、結果として癇癪が減る場合が多いのです。
一方で、うまく伝える方法がなかったり、気持ちのコントロールが難しかったりする場合には、癇癪を継続したり頻度や激しさが高まる場合があるかもしれません。ただし、年齢が小さい時とは、コミュニケーション手段としての使い方や意味合いが変わってきている場合があります。
単に不快さを伝えるシンプルな意味から、「お菓子が欲しいから」「遊びをやめたくないから」「その場所に行きたくないから」といったように、何かを獲得するため・嫌なことを回避するためといった、複数の意味を持つコミュニケーション手段として癇癪が使われている可能性があります。
【要因2】コミュニケーション手段の少なさ
癇癪は成長とともに落ち着いていくことが基本的には多いです。気持ちのコントロールが上手になってくるだけではなく、癇癪ではない形のコミュニケーションの手段を獲得していくからです。
先ほど「赤ちゃんはみな泣いたり癇癪を起こしたりして不快を伝える」という例えをしましたが、言葉の発達に遅れがあったり、伝えたい事に対してコミュニケーション手段が十分に獲得できていなかったりする場合は、ほかに要求を伝える手段がないから癇癪になりやすいとも考えられます。
また、年齢が小さいお子さまは体が未発達なこともあって、まだできないこと、思うようにいかないということが多く、失敗体験をしやすいことも、癇癪につながりやすい要因の一つかもしれません。
先ほど「赤ちゃんはみな泣いたり癇癪を起こしたりして不快を伝える」という例えをしましたが、言葉の発達に遅れがあったり、伝えたい事に対してコミュニケーション手段が十分に獲得できていなかったりする場合は、ほかに要求を伝える手段がないから癇癪になりやすいとも考えられます。
また、年齢が小さいお子さまは体が未発達なこともあって、まだできないこと、思うようにいかないということが多く、失敗体験をしやすいことも、癇癪につながりやすい要因の一つかもしれません。
【要因3】発達特性の影響
癇癪が起きやすくなる要因として、発達特性が関与している場合があります。例えば以下のような苦手なことがあると、要因1の興奮しやすさや、要因2の癇癪以外の適応的なコミュニケーションをとるのが難しいなどにつながりやすい可能性があります。その結果として癇癪となって現れるということもあります。
・気持ちのコントロールが難しい
・相手の意図を汲んだり、他者と自分意見を擦り合わせたりするのが苦手である
・環境の変化に弱い
・感覚の過敏さがある
先ほど、年齢が上がることで癇癪が落ち着くことがあるとお話ししましたが、年齢が上がっても継続することがあります。その要因としては、「癇癪を起こせば思いが伝わる」など、癇癪がコミュニケーション手段として強固に身についている、ほかにコミュニケーションの手段がない、上記のように環境と特性がうまく噛み合わず、癇癪が起きやすい状態がある、などが考えられます。
このような場合には、特性に合った対応や支援がより必要になるかもしれません。
・気持ちのコントロールが難しい
・相手の意図を汲んだり、他者と自分意見を擦り合わせたりするのが苦手である
・環境の変化に弱い
・感覚の過敏さがある
先ほど、年齢が上がることで癇癪が落ち着くことがあるとお話ししましたが、年齢が上がっても継続することがあります。その要因としては、「癇癪を起こせば思いが伝わる」など、癇癪がコミュニケーション手段として強固に身についている、ほかにコミュニケーションの手段がない、上記のように環境と特性がうまく噛み合わず、癇癪が起きやすい状態がある、などが考えられます。
このような場合には、特性に合った対応や支援がより必要になるかもしれません。
まとめ
今回は、オンラインセミナーでお伝えした内容をもとに、癇癪が起きる仕組みや影響しやすい要因をお伝えしました。「なぜ癇癪が起きているのか?」という観点で振り返ってみると、もしかしたらお子さまの行動に影響している要因のヒントが見つかるかもしれません。
とはいえ、癇癪は、解決するのがとても難しいお悩みの一つです。対応する保護者の方にとって、家庭で抱え込んでつらくなってしまうこともあるかもしれません。また、具体的に要因を探ったり、どのようにサポートするか方法を考えたりするにはハードルもあるでしょう。そのような場合には、相談機関や支援者の方への相談をお勧めします。
近くに相談できる場所がないという場合には、お子さまの特性や背景要因、サポートの方法などのヒントが得られるオンラインツールなど、負担を減らす方法を検討するといいでしょう。発達ナビにもいくつかの選択肢があります。活用できるものがないか探してみてください。
とはいえ、癇癪は、解決するのがとても難しいお悩みの一つです。対応する保護者の方にとって、家庭で抱え込んでつらくなってしまうこともあるかもしれません。また、具体的に要因を探ったり、どのようにサポートするか方法を考えたりするにはハードルもあるでしょう。そのような場合には、相談機関や支援者の方への相談をお勧めします。
近くに相談できる場所がないという場合には、お子さまの特性や背景要因、サポートの方法などのヒントが得られるオンラインツールなど、負担を減らす方法を検討するといいでしょう。発達ナビにもいくつかの選択肢があります。活用できるものがないか探してみてください。
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