「きっと伸びる、才能がある」という思いの中にあるのは

発達障害のある人たちのなかには、並外れた記憶力を持つ人もいれば、数学やプログラミングに秀でている人もいます。このような人たちの中は、プログラムの間違いを見つける仕事に才能を発揮することもあると聞いたことがあります。
こんな話を聞くと、発達障害と診断されると、天才児になることを夢見て、必死で“才能の温泉掘り”をしてしまう人もいます。

周りのママ友からも「きっと人にはない才能があるはずよ」と励まされることもあります。うまくいけばいいのですが、そうではないケースもしばしば起こります。また、本人がしたいことよりも「親がこうなって欲しい」と無理強いしているだけのこともあります。

支援施設のスタッフから「どの子にも必ず秘めた才能がありますから、お母さん、夢を諦めないで」と励まされている人を目にしたこともあります。その言葉を拠り所に頑張っている親御さんもいます。たしかに幼児期に「一生このままだ」と思ったら絶望を感じる人もいるのではないかと思います。

でも、親の心の奥には「あなたが障害さえ克服してくれたら、ママは幸せになれるのに……」という気持ちがあるのかもしれません。
「きっと伸びる、才能がある」の思いの中には、今、目の前にいるわが子の障害受容ができない親自身の姿があるのかもしれません。

第三者からかけられる「必ず伸びる!今、お母さんががんばれば、お子さんの未来が開ける!」これらの期待や励ましは、つらい子育ての活力の元になることもありますが、相手を追い詰め、燃え尽きさせる危険な言葉になることもあります。伸びると信じて夢や希望を持つことはよいことです。でも、伸びない子どもも受け容れて初めて、受容になるのだと思います。

もしかして、障害の受容って「子どもの障害を受け入れる」というよりは、親が「障害を受け入れたくない自分を受け入れること」という表現をした方が分かりやすいかもしれませんね。

執筆/立石美津子

(監修:鈴木先生より)

逆に、何かが起こるから人生は面白いとも考えられます。ニュースを見ててもわかるように毎日どこかで何かが起きています。何かが起きるものだと考えたほうが楽かもしれません。
私の外来では、常に何か最悪の症状になったことを念頭に置いて診療しています。そうでないと、重症になった場合すぐに指示を出せないからです。誰でも自分の子どもを障がい者にはしたくありません。以前お話ししたDrotarの心理経過のように、障がいを受け入れたくない否定から始まり、そして医療者へ攻撃し、適応・再起と変化するのが普通です。これらの時間は個人差があり、父親や母親でも違ってきます。「障がいを受け入れたくない自分を受け入れられた」ことでようやく適応・再起へと変化したのでしょう。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030427
発達障害に生まれて
発達障害に生まれて
Upload By 立石美津子
発達障害に生まれて
立石美津子
中央公論新社
Amazonで詳しく見る
立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
Upload By 立石美津子
立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
Amazonで詳しく見る
動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな
動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな
Upload By 立石美津子
動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな
立石美津子
小学館クリエイティブ
Amazonで詳しく見る
育ててわかった 発達障害の子の就学・就労・自立の話
育ててわかった 発達障害の子の就学・就労・自立の話
Upload By 立石美津子
育ててわかった 発達障害の子の就学・就労・自立の話
立石美津子
第三文明社
Amazonで詳しく見る
「親なきあと」に向けて、子離れ・親離れはいつから?孤立無援の中での「自由」は快適ではないけれどーー精神科医・田中康雄先生のタイトル画像

「親なきあと」に向けて、子離れ・親離れはいつから?孤立無援の中での「自由」は快適ではないけれどーー精神科医・田中康雄先生

急に怒りが爆発・癇癪を起こすのタイトル画像

急に怒り出したように見えるけど、本人にとっては違うかも?

「障害は遠い世界の話」だったのに、わが子に障害が?子育てがつらい、未来が見えない…絶望していた私が障害受容にいたるまでのタイトル画像

「障害は遠い世界の話」だったのに、わが子に障害が?子育てがつらい、未来が見えない…絶望していた私が障害受容にいたるまで

3歳児検診で初めて言われた「発達障害かも」――不安や抵抗を感じる余裕もなく...7年経った今、息子について思うこと【障害受容 前編】のタイトル画像

3歳児検診で初めて言われた「発達障害かも」――不安や抵抗を感じる余裕もなく...7年経った今、息子について思うこと【障害受容 前編】

3名の女性当事者が語る――発達障害を受容して前を向くには?便利グッズも活用した生活術とは?動画も配信【part1】のタイトル画像

3名の女性当事者が語る――発達障害を受容して前を向くには?便利グッズも活用した生活術とは?動画も配信【part1】

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。