1人ひとりの「感覚の特性」を考えよう!よく聞く感覚統合ってなに?

「感覚」とは、私たちの身体の内外から受け取ることができる刺激のことを言います。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感以外に、「固有受容覚」と「前庭覚」という大事な感覚があります。

親子のヒント
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私たちの感覚は、「五感」だけじゃない?
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「感覚」とは、私たちの身体の外から受け取ることができる刺激のことを言います。

よく耳にする感覚は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚とありますよね。
でも実は「五感」以外にも、「固有受容覚」「前庭覚」という大事な感覚があります。

これらは、身体を無意識にコントロールするためにはとっても大事な感覚なんです。

ここでは、触覚・固有受容覚・前庭覚についてお話します。
■触覚 触覚は、皮膚を通して感じる感覚のことです。
触覚の種類は主にこちら

触覚は触ったり、触られたりすることを感じる感覚で、皮膚を通して感じます。
針でチクッと刺された痛み、水を触ったときの温度、毛布の柔らかさなどを感じる感覚です。

触覚には主に,以下の4つのはたらきがあります。
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①情緒を安定させるはたらき

お母さんに抱っこされたときの肌と肌のふれあいや、毛布でくるまれたときの心地よさが情緒を安定させることにつながります。

泣いている子どもをあやすときに、優しく背中をさすることもあると思います。これも触覚を通して情緒の安定を促していると言えます。

②防衛するはたらき

熱いやかんに触れた瞬間に手をやかんからパッと離すことがありますよね。
また腕に虫が止まると、サッと払いのけることもあると思います。

このように皮膚を通して危険を感じたときに防衛するはたらきが、触覚にはあります。

③識別するはたらき


5円玉と切符が入っているポケットから、5円玉を取り出すとします。
私たちはポケットの中を見なくても、間違えずに5円玉を取り出すことができると思います。

それは、素材の違いなどを触覚によって識別しているからです。この識別する能力は、手の器用さにもつながっていきます。

④ボディイメージ(身体の地図を把握する)の発達を促すはたらき

触覚はボディイメージを把握するために必要な感覚です。

皮膚は自分の身体と外界との境界にあるため、皮膚から感じる触覚を通して、私たちは自分の身体の輪郭を感じることが出来ます。

これらが自分の身体の大きさや長さなどを把握する基になっていきます。

ボディイメージを把握できることで「このスペースは通れそうかな?」「天井が低いから身を屈めようかな?」と環境との関係性を把握することに繋がってきます。

■固有受容覚 自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚です。
固有受容覚の種類は、このようなものがあります。
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固有受容覚は自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚です。
受容器は筋肉や関節です。

固有受容覚には主に以下の6つのはたらきがあります。

①力を加減するはたらき

机や椅子を運ぶ時はギュッと手に力を入れて持ちます。逆に豆腐や卵を持つときはそっと優しく持ちますよね。

このように活動によって私たちは力を加減しています。そのときに重要な役割を果たしている感覚が固有受容覚です。

②運動をコントロールするはたらき

ジェンガを行う時はゆっくりと手を動かす(肩・肘の関節をゆっくり動かす)と思います。
このように関節をゆっくりと曲げ伸ばしできるのも固有受容覚がしっかり働いているからです。

③重力に抗して姿勢を保つはたらき(抗重力姿勢)

手を使った活動をするときには重力に抗して身体を持ち上げて姿勢を保つ必要があります。
このように身体を持ち上げて持続的に姿勢を保つのは固有受容覚のはたらきです。

④バランスをとるはたらき

バランスをとるときに自分の身体の傾きを感じるのは主に前庭覚のはたらきですが、転ばないようにすばやく筋肉を調整して姿勢を保つことは主に固有受容覚のはたらきです。

⑤情緒を安定させるはたらき

例えば緊張している時に貧乏ゆすりをしたり、イライラしている時に奥歯を強く噛んで口に力を入れたりしたことはありませんか?

このように固有受容覚を感じることで情緒を安定させるはたらきがあります。

⑥ボディイメージ(身体の地図を把握する)の発達を促すはたらき

固有受容覚は触覚とともに身体の地図を把握するために必要な感覚の一つです。

⑦ボディイメージ(身体の機能を把握する)の発達を促すはたらき

固有受容覚は前庭覚とともに身体の機能を把握するために必要な感覚の一つです。

特に、固有受容覚は手足の動きを把握する上で重要な感覚であり相手の動きを真似したり無意識に(リズミカルに)手足を動かしたりすることに大きな役割を担っています。
■前庭覚 「前庭覚」は、自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚です。

前庭覚の種類は、このようなものがあります。
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前庭覚は自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚です。
受容器は耳の奥にある耳石器と三半規管です。
前庭覚には主に以下の5つのはたらきがあります。


①覚醒を調節するはたらき

前庭覚は覚醒(脳の目覚め具合)と大きく関連しています。

例えば授業中に眠くなったとき、頭を振って目を覚まそうとした経験はありませんか?

これは脳がぼんやりしているときに、前庭覚を取り入れることでシャキッと脳が目覚めてエンジンがかかりやすくなるからです。

②重力に抗して姿勢を保つはたらき(抗重力姿勢)

私たちが地球上で生きていくためには身体が重力に負けていては生活できません。

何か活動をするときには重力に抗して身体を持ち上げて姿勢を保つ必要があります。

この重力を感じるのは前庭覚のはたらきです。

③バランスをとるはたらき

バランスをとるときに自分の身体が傾いているかどうかを素早く感じるのは主に前庭覚のはたらきです。

④眼球運動をサポートするはたらき

くるくる回転したら目が回りますよね。
これは回転という前庭覚が眼球を動かす筋肉と連動し、目が回るという仕組みで起こります。

このように前庭覚と眼球を動かす筋肉には関連があります。

⑤ボディイメージ(身体の機能を把握する)の発達を促すはたらき

前庭覚は、固有受容覚とともに自分の身体の機能を把握するために必要な感覚の一つです。

身体の機能が把握できることで、この距離なら跳べるかな?この高さなら飛び降りれるかな?などを把握し適切に環境への挑戦を行うことができます。
感覚が統合していくと、できることが増えていく
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これまでご紹介した様々な感覚は、「統合」されることで新たな機能を獲得していきます。

例えば「姿勢をまっすぐ保って座る」という動作。
これは、バランスの感覚(前庭覚)と、重力の働きにあらがう力(固有受容覚)がともに発達していくことで、できるようになっていきます。

私たちが毎日無意識に行っている動作や行為は、感覚が下支えとなっています。

上手に着替えができない、縄跳びが飛べない、不器用、などお子さんの躓きに直面したら、

克服しようと練習する前に、お子さんの今できること、今苦手なことをよく考えてみるのも良いでしょう。誰かと比較するのではなく、お子さん自身が今できていることを土台に、工夫を見つけていきたいですね。
成長を見据えて大切にしたいこと
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感覚の種類や、統合についてご紹介しました。

着替えや運動など、生活の中でお子さんの躓きに気づいたときは
「これがもう少し出来るようになってほしい」「出来るようになったら、もっと生活がしやすくなるのに」
と、思うこともありますよね。

ですが自宅で成長を促したいと工夫をするときには、お子さんが楽しんでいるかどうかを意識してみましょう。

「練習」ではなく、「ゲーム・あそび」で取り組む。
「できるまでくり返す」ではなく、お子さんが「もっとやりたい!」と思っていたら続ける。

など、お子さんの「楽しい!もっとやりたい!」という気持ちを大切にしていきましょう。
※記事中の画像はイメージです
監修者
高畑 脩平 先生
白鳳短期大学 リハビリテーション学専攻 作業療法学課程 講師 奈良教育大学特別支援教育研究センター 研究員 奈良県障害者総合支援センター 作業療法士
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