「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」におけるポイント

上記の「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」に関する取り決めは、国や地域の役所などの行政機関と、お店や会社などの民間事業所とで少し異なります。

障害者に対して差別的な対応をするという「不当な差別的取扱い」については、行政機関も民間事業所も、「行ってはいけない」という法的義務が課されている点で一致しています。

一方、一人ひとりのニーズに対して適切な配慮を行う「合理的配慮の提供」については、行政機関は「しなければならない」(法的義務)のに対し、民間事業所は「実施するように努める」(努力義務)という違いがあります

また、民間事業者についての補足として、たとえばお店のお客さんなどの、サービス利用者に対しての合理的配慮は努力義務であるが、みずからが雇用した労働者に対しての合理的配慮は法的義務となることが、厚生労働省の指針にて定められています。
行政機関と民間事業所の違い
行政機関と民間事業所の違い
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障害者差別解消法ポスター|内閣府
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/sabekai/poster.pdf

どのように「差別」を「解消」するの?

障害を解消させるためにどんなに理想的な法律を定めても、その法律が実際に活用されなければ意味がありません。障害者差別解消法では、各分野においてしっかりと法が浸透していくよう、「対応要領」と「対応指針」というものを策定することが定められています。
対応要領と対応方針
対応要領と対応方針
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対応要領

国や都道府県、役所の人々がこの障害者差別解消法に基づいて適切な対応ができるよう、自らの職員に向けて作ったものを「対応要領」といいます。これは、障害のある方からの意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮についての基本的な考え方や具体例を定めたものです。
参考:関係府省庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領|内閣府
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/taioyoryo.html

対応指針

対応要領が役所の人に対しての取り決めであるのに対して、対応指針は会社やお店などの事業者に向けられたものです。事業者を所管する国の役所によって定められています。こちらも障害のある人の意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮について詳しく書かれています。

各事業者はこの対応指針を参考に、自らで差別解消への取り組みを進めていくよう求められます。法律に反することを何度も行う、もしくは自主的に改善する様子が見受けられない場合には国に報告を求めたり注意したりすることがあります。
対応指針をもう少しわかりやすく説明するため、今回は教育、交通機関に注目し、具体的な内容について紹介します。
   
教育
文部科学省は主に私立学校を対象に、対応指針を取りまとめました。公立学校は合理的配慮の提供が法的義務として定められていますが、私立学校においても不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮に努めることが具体的な例とともに示されています。

■不当な差別的取扱い
・受験や入学、その他の学校生活において参加を拒んだり、拒まない代わりの条件を、正当な理由なく付けてはならない。
・試験などにおいて合理的配慮の提供を受けた場合に、それを理由として本人を評価の対象から外したり、差を付けたりしてはならない。

■合理的配慮
・施設や施設内において、車いす利用者のためにキャスター上げなどの補助をしたり、段差に携帯スロープを渡したりして配慮を行う。
・疲れやすい障害者から休憩の申し出があったときは、別室の確保などで対応を行う。それが困難である場合は、本人に説明をした上で臨時の休憩スペースを設けるように努める。
参考:文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針について(通知) |文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1364725.htm
参考:文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針|文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/11/1339465_0100.pdf
不動産・交通機関
国土交通省は、国土交通に関する分野を不動産・設計・鉄道・バス・タクシー・海外航路・国内航路・航空・旅行業の9つの分野に分けて取りまとめました。ここでは主に不動産や一般的な移動手段に関する具体例をご紹介します。

■不当な差別的取扱い
・ 物件広告に「障害者お断り」として入居者募集を行ってはならない (不動産)
・ 障害があるということで、乗車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)
・ 身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬、介助犬を同伴しているということを理由に車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)

■合理的配慮
・ 障害者の求めに応じて、バリアフリー物件等、障害者が不便と感じている部分に対応している物件があるかどうかを確認するよう努める(不動産)
・ コミュニケーションボードや筆談により対応を行って対応する(鉄道、バスなど)
参考:国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針|国土交通省
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000062.html

差別を解消するための仕組み

差別を確実になくしていくためには、差別が起こらないように対策する仕組みや、何か問題が起きたときに相談を受けたり解決したりする仕組みが必要です。

相談体制と紛争解決の仕組みについて

障害者差別解消法では、障害者差別に対応する機関を新たに設置することは定められていません。その代わりに今すでに存在する行政の相談機関などを充実させ、活用することが求められています。

さらに地方公共団体は、条例を策定して障害のある方が実際に相談したり、紛争を防止・解決したりするような体制を整えることも期待されています。

また、障害による差別で悩む方が、複数の機関の間でたらいまわしにされることがないよう、国や地方公共団体は「障害者差別解消支援地域協議会」を設置することができます。この協議会は障害に関する差別が起きたときに解決のための支援を行う組織であり、現在もさまざまな地域で組織作りが進んでいます。

罰則について

差別的な扱いや合理的配慮の不提供が見られても、それをした人や事業者がただちに罰則を受けるということはありません。

ただし、差別が繰り返し行われる場合や、自主的な改善ができないと思われる場合には、その事業者が行う事業を担当している大臣が、事業者に対して報告を求めたり、助言や指導、勧告をしたりできます。

なお、求めた報告に対して報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、20万円以下の罰則が科せられる場合もあります。
参考:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)|内閣府
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65.html
参考:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>|内閣府
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_qa_kokumin.html
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