PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?診断・支援方法は?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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PDD-NOSは『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)において、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のグループに属する障害でしたが、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では、PDD-NOSの症状や発達障害の中での位置づけから障害者手帳取得の可否までご紹介いたします。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?

PDD-NOSとはPervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specifiedの略で特定不能の広汎性発達障害のことです。
『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)においては、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴とするカテゴリー「広汎性発達障害」に含まれる疾患の一つとして、「特定不能の広汎性発達障害」が記載されています。

なお、2013年、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版 テキスト改訂版)において、PDD-NOSという診断区分はなくなり、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。
とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、医療機関などでまだPDD-NOSの名称を使用している場合もあることから、本記事ではPDD-NOSという名称を使いご説明いたします。

※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/

PDD-NOSの診断

PDD-NOSは、自閉症、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害という広汎性発達障害に属するものに当てはまらず、また、統合失調症、失調型パーソナリティ障害や回避性パーソナリティ障害などの基準を満たさない場合に診断されていました。

※PDD-NOSは現在ASD(自閉スペクトラム症)に包含されています。ASD(自閉スペクトラム症)の診断基準は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」および「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などで、医療機関で問診や心理検査、行動観察などを行い、医師が総合的に判断して診断を行っています。
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PDD-NOSの原因

特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)は、その名の通り特定の原因は不明とされています。

現段階では正確な原因は解明されていませんが、ASD(自閉スペクトラム症)は脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、さまざまな環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。
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PDD-NOSかなと思ったら…?

上記で述べた症状や特徴などが見受けられる場合、専門家に判断してもらうことをおすすめします。ですが、いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。

また、1歳半や3歳児健診などの乳幼児健康診査がある場合は、医師や専門家もいるのでその際に相談してみるのもよいでしょう。

相談窓口

子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター
・児童相談所 など

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など

児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。

以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。
LITALICO発達ナビ地域情報|発達障害者支援センターの施設一覧
https://h-navi.jp/support_facility
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医療機関

・どの診療科にいけばいいの?
PDD-NOSの診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院によりさまざまな名前となっています。

どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。

大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的ですが、大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。

上記の相談機関で紹介してもらえるほか、医師会や障害者支援センター、発達障害者支援センターなどでも調べることができます。

発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。

以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。
日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」
https://service.kktcs.co.jp/smms2/c/jscn/ws/jscn/List.htm?t=https://www.childneuro.jp/themes/childneuro/relation/licenselist_dd.html
LITALICO発達ナビ地域情報|病院(発達障害の診療可)の施設一覧
https://h-navi.jp/support_facility/developmental_disabilities_clinic
・ 診断・検査の流れ
本人や保護者に対する問診面接)や行動観察家族・学校の先生による提供情報の精査などと、専門機関によっては知能検査発達検査などを実施する場合もあり、筆記や口頭質問などの検査が行なわれ、さまざまな情報を総合的に評価して診断されます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診で診断されることはあまりありません。

知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)ウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。

・診断に必要な準備や持ち物
初診時に必要な物として健康保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。

発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿ホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。
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