PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?自閉症やアスペルガーとの違い、診断・支援方法は?

PDD-NOSは広汎性発達障害のグループに属する障害ですが、アスペルガー症候群や自閉症スペクトラム障害などと何が違うかご存知ですか?この記事では、PDD-NOSの症状や発達障害の中での位置づけから障害者手帳取得の可否までご紹介いたします。


PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?
この障害はアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版 テキスト改訂版)という診断基準により分類されたものです。
しかし、2013年、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版 テキスト改訂版)において、PDD-NOSという診断区分はなくなり、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。そのため、現在はPDD-NOSの診断名が下されることは少なくなりつつあります。
とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、医療機関などでPDD-NOSの名称を使用している場合も多いことから、本記事では『DSM-Ⅳ-TR』において定義されているPDD-NOSについてご説明いたします。
広汎性発達障害が含む5つの障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、PDD-NOSを指します。
この広汎性発達障害という発達障害のグループの特徴として
①対人関係・社会性の障害
②コミュニケーションの障害
③特徴的なこだわりや興味
の3つが挙げられます。
PDD-NOSの定義
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4260118897対人的相互反応の発達に重症で広汎な障害があり、言語的または非言語的なコミュニケーション能力の障害や常同的な行動・興味・活動の存在を伴っているが、特定の広汎性発達障害、統合失調症、失調型パーソナリティ障害、または回避性パーソナリティ障害の基準を満たさない場合に用いられるべきである。例えば、このカテゴリーには“非定型自閉症”――発症年齢が遅いこと、非定型の症状、または閾値に達しない症状、またはこのすべてがあるために自閉性紹介の基準を満たさないような病像――が入れられる。
引用:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2004年 医学書院/刊
PDD-NOSは他の診断基準ではどう扱われるの?
ここでは、PDD-NOSに相当する症状が、別の診断基準ではどのような名称なのか紹介いたします。
・『DSM-5』におけるPDD-NOS
『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版であり、2013年に発行された『DSM-5』において、PDD-NOSという診断基準はなくなり自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。
DSM-Ⅳ-TRでは、こだわりや常同性がない、または弱い場合にPDD-NOSとして診断されることもありましたが、DSM-5では行動、興味、および活動の限定された/反復的な行動様式が見られない場合、社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害として診断されるようになりました。
世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)(以下、本文中の表記は『ICD-10』とする)という診断基準では、『DSM-Ⅳ-TR』におけるPDD-NOSは非定型自閉症、他の広汎性発達障害、広汎性発達障害,特定不能のものという3つのカテゴリーに相当するとされています。

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PDD-NOSの診断基準
1.広汎性発達障害にみられる症状がある
2.広汎性発達障害に含まれる他の障害カテゴリー基準に当てはまらず特定できない
という2つの条件をどちらも満たすものです。
そのため、一言にPDD-NOSといっても、その症状は一人ひとり異なります。また、症状の程度は他の広汎性発達障害のなかでは比較的軽いと一般的には言われています。
以下において、PDD-NOSの2つの条件についてそれぞれ説明いたします。
1.他の広汎性発達障害にみられる症状がある
PDD-NOSを除く4つの広汎性発達障害にみられる症状の特徴として以下の3点があります。
・対人関係・社会性の障害
人とのかかわりにおいて、お互いが快適に過ごすための振る舞いが難しく、良好な対人関係を築きにくいこと。
・コミュニケーションの障害
話し言葉や、表情や身振りなどのコミュニケーション能力において、なんらかの障害がみられること。たとえば、一方的な発話、独り言、言外の意味の組み損ねや話題の偏りやお決まりのフレーズなどが例に挙げられます。
・特徴的なこだわりや興味
特定の習慣や儀式にかたくなな興味をもつことや、特定の対象に対して持続的に熱中すること。
以下において説明する、4つの広汎性発達障害の基準を満たさない場合、PDD-NOSに分類されます。
・自閉症
自閉症は、目や耳から脳に入ってきた情報を「意味のあるまとまったこと」として認知することを苦手とします。原因は脳の器質的な異常によるもので、遺伝病ではありませんが、染色体異常や遺伝子異常などの遺伝的素因が強く、先天的に発症するという考え方が有力です。具体的な原因遺伝子はまだ解明されていません。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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アスペルガー症候群(AS)は対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらい障害で、知的障害や言葉の発達の遅れがないものを言います。明確な原因は現在もわかっていませんが、何らかの脳機能の障害と考えられています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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レット障害(レット症候群)は、ほとんどが女児に見られる脳障害で、少なくとも6ヶ月の正常な発達の時期を経た後に、重度の精神および運動の発達的後退がみられます。この障害の原因はX染色体上の遺伝子異常(MECP2、CDKL5、FOXG1)であることが1999年に解明されています。このため、『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版である『DSM-5』では、自閉症スペクトラム障害から除外されました。
2~5歳頃まで健常な発達をしていたが、言語の理解や表出能力の退行が始まり、退行が終わったあとは自閉症と類似した症状を示すようになる障害です。原因はほとんど解明されていません。脂質代謝異常(コレステロールの蓄積)、はしかやウイルスの脳への感染、遺伝性疾患などとの関連がある可能性を指摘されています。
PDD-NOSの発現時期
中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。

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PDD-NOSの原因
現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。また、かつて言われたような親のしつけや愛情不足といった子育てのしかたによるという説は、医学的に否定されています。

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また、1歳半や3歳児健診などの乳幼児健康診査がある場合は、医師や専門家もいるのでその際に相談してみるのもよいでしょう。
相談窓口
【子どもの場合】
・保健センター・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター
・児童相談所 など
【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など
児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。
以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。

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医療機関
PDD-NOSの診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院により様々な名前となっています。
どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。
大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的ですが、大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。
上記の相談機関で紹介してもらえるほか、医師会や障害者支援センター、発達障害者支援センターなどでも調べることができます。
発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。
以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。
本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などと、専門機関によっては知能検査や発達検査などを実施する場合もあり、筆記や口頭質問などの検査が行なわれ、様々な情報を総合的に評価して診断されます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診で診断されることはあまりありません。
知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。
・診断に必要な準備や持ち物
初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。
発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。

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PDD-NOSは治療できるの?
療育
療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことで、その子に合った学び方や人との関わり方を見つけやすくなります。
出典:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/rehab/r055/r055_018.html療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。
(出典:療育と教育の接点を考える|障害保健福祉システムHP)
薬物療法
薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、その子の課題に応じた支援を行い、自分に合った学び方や人との関わり方の獲得を促していくと効果的であるともいわれています。

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PDD-NOSの場合、障害者手帳は取得できるの?
取得できる手帳の種類
PDD-NOSと診断されただけでは療育手帳付与の対象とはなりません。しかし、療育手帳を申請し、知的障害を有すると認められた場合は療育手帳が取得できます。

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精神神経症状をともなう発達障害は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となります。そのため、PDD-NOSの症状によって、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があると認められた場合は、精神障害者保健福祉手帳を受けることができます。

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まとめ
お子さまの発達に何か違和感を覚えた段階で、お住まいの地域の発達障害者支援センターなどの相談窓口に連絡を取ることをおすすめいたします。
専門家や支援機関のアドバイスも参考にしながら、子どもの課題に応じた支援を受け、その子らしい学び方、過ごし方を身につけることを応援していきましょう。

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