大人のチック症、周囲の人にできることは?

チック症はわざとではないのにやめられない、止まらない動きや発声が主な症状です。この症状に誰よりも苦しんでいるのはチック症の当事者です。ここでは、チック症に悩む当事者を支援するために周囲の人ができることを考えていきます。

1. まずはチック症を理解する
当記事でここまで述べてきたとおり、チック症は脳の機能障害で、脳の神経活動の不安定さが引き起こす症状です。チック症特有の言動の繰り返しに、とまどいやイラ立ちを覚えることもあるでしょうが、故意や悪意でやっているのではないことをぜひ理解してください。

2. 日常生活では「温かい無視」を
「温かい無視」とは、簡単に言うと症状を理解した上で見て見ぬふりをするということです。チックに苦しむ当事者にネガティブな感情をぶつけるのは論外ですが、はれものに触るような扱いも当事者を傷つけることはあります。症状のささいな変化には目をつぶり、チックは当事者の特徴の一つでいつかは消える、消えなくても大したことはない、とおおらかに受け止めることは、じゅうぶんな当事者支援になります。

3. 求められた時には手助けする
大人のチック症はまだ認知度が低いため、周囲の人がなかなか理解できないのと同様に、場合によっては当事者自身も気づいていなかったり、受容できずに苦しんでいたりすることがあります。周囲の人にできることの基本は「温かい無視」なので過度の手助けは考えものですが、チック症であるという自覚や受容ができないまま苦しんでいる場合は、相談に乗るなどの支援をしてもよいかもしれません。

支援の仕方はチック症当事者との関係・距離感に応じて変わりますが、症状を抱えながらも努力し成長しようとする人が、社会に阻まれることなく暮らしていける世の中こそ、誰にとっても暮らしやすい社会であるはずです。チック症のあるなしに関わらず、すべての人がのびのびと暮らせる社会になるとよいですよね。

まとめ

チックは一見するとただの癖に見えるため、自分の意思でやめられると勘違いされやすいのですが、脳神経の発達のアンバランスがひき起こす障害です。時にはわざとやっていると誤解されたり、悪意を向けられたりすることもあるため、当事者は社会適応に困難を感じているのが現状です。

チックは子どもによく見られますが、大人でも症状がある人はいます。学校や会社を休むほどの症状ではなくても、本人が苦しいと感じているのであれば、一度病院へ行き、相談をしてみてください。周囲の人々はチック症の特徴を理解し、当事者の困りごとに寄り添った「温かい無視」を心がけてあげてください。

チック症の根本的な治療法はまだ確立していませんが、研究も日々進められています。チックとのつきあい方を知り、服薬などの治療を受ければ症状は緩和できます。その症状や当事者の暮らしぶりは少しずつ周知され、支援の輪も広がってきています。

社会適応に困難を感じているチック症の方々は、「合理的配慮」という考え方をこの機会にぜひ知ってください。当事者も周囲の人々もチック症の知識と対応を学んで、チックで孤立する人を生まない社会を目指していきましょう。
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