大人のチック症、医療機関で受診したほうがいい?

チック症は本人に生活上の不便がなく辛さも少なければ、必ずしも受診が必要なわけではありません。しかし、仕事や学校生活に支障が出る可能性があるようでしたら、対処法を知るために一度受診してみることをおすすめします。

大人のチック症、何科を受診すれば良いの?

チック症は心療内科精神科で診察を受けることができます。チック症は脳神経の働きの乱れで症状が出るので、精神神経科神経内科がある病院はさらにおすすめです。上で紹介した日本トゥレット協会のHPには治療・診察ができる病院のリストがあるので、どうぞご利用ください。
参考:日本トゥレット協会|医療機関リスト
http://tourette-japan.org/%e5%8c%bb%e7%99%82%e6%a9%9f%e9%96%a2/

大人のチック症、どんな治療をするの?

チック症の治療は、一人一人の症状の程度に応じて治療方針が決められます。

軽度の場合:身体や心理的なストレスを減らす
本人に対してはまず、ストレスを減らすための環境調整の工夫が提案されます。具体的には医師や臨床心理士による本人へのカウンセリング、箱庭療法・認知療法・行動療法などの心理療法です。本人だけでなく家族やパートナーへの症状理解を促すガイダンスも治療の一環になることもあります。

重度の場合:服薬や認知行動療法の指導を受ける
環境調整だけではつらさが解決しない場合は薬物療法が有効です。症状が長期・慢性化していて頻繁だったり激しかったりする場合には、ドーパミンに作用する抗精神病薬が処方されることが多いそうです。これらの薬はふらつくなどの副作用が出ることもありますが、チックが出る回数が減ったり、動きや声が小さく目立ちにくくなったりすることが確認されているそうです。薬物療法の他に、チックをコントロールしやすくする認知行動療法も最近では注目されています。
参考:前田クリニック
http://www.dr-maedaclinic.jp/dp110.html

チック症がある大人の方の、暮らしの工夫は?

チック症は一時的に激しくなっても時間が解決することもある病気です。しかし、脳神経の働き方の癖が原因であるため、環境が変わったり体調が変化したりすると症状が再発する可能性があります。ケガや風邪のように薬や安静で完全に治癒する、とはいえないのがチック症の悩ましいところです。

ただ、チック症はもともと自然経過のなかで軽減していくことも多く、環境調整が効果的な治療なので、本人がリラックスできる生活習慣を身につけておくことに一定の効果はあると思われます。そこで、以下に3つの生活上の工夫を提案します。

周囲に理解者を増やす

周囲の人に理解をしてもらえると、不安や緊張感にさいなまれる気持ちはだいぶ軽くなるのではないでしょうか?チック症を診察してくれる医療機関や自助グループでは、症状理解のためのパンフレットを作成し、啓発を促しています。下記に参考リンクを2つ紹介するので、ぜひご覧ください。
参考:厚生労働省|障害者対策総合研究事業「チック」や「くせ」をよく知ってうまくつきあっていけるように
http://kokoro.umin.jp/pdf/tic.pdf
参考:NPO法人 日本トゥレット協会|もしかして「トゥレット症候群」ではありませんか?
http://tourette-japan.org/wp-content/uploads/2016/01/design_151211_print.pdf
チック症の説明を自分ですることが難しい時に、これらのリンクをメモしておいたりパンフレットを印刷して携帯しておいたりすることも、理解者を増やしていく工夫の1つです。

しかし、現実には周囲の理解は得にくい、チック症が出ていると伝えること自体に羞恥心や恐怖心があるとお悩みの方も、中にはいらっしゃることでしょう。そのような、一人で悩まれている方々には、ぜひお知らせしたい言葉があります。それは「合理的配慮」という言葉です。
合理的配慮とは?考え方と具体例、合意形成プロセスについて【専門家監修】のタイトル画像

合理的配慮とは?考え方と具体例、合意形成プロセスについて【専門家監修】

合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。

障害者差別解消法では、合理的配慮の対象は“法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない”としており、様々な社会の誤解や偏見により困難がもたらされている人も含むと規定しています。不安や緊張感にさいなまれるチック症当事者には配慮を求める権利があり、配慮は行政や事業者の義務であると法律が定めています。また、当事者を支援するために家族やパートナーが代理で配慮を求めることも認めているのです。

このような法律を持ち出さなくても、人間の多様性を認め互いに合理的な配慮を行うことで社会は円滑に運営できる、社会はそこまで成熟しつつある、という考えは今後も広まっていくことでしょう。チック症においては孤立しないということも広い意味での心理的治療になるといえるので、支援の手を憶することなく利用できるとよいですね。

苦しい時に、物理的に逃げる場所を作っておく

チックの兆しを感じたら一人になれる場所をあらかじめ作っておくのもおすすめです。個別の状況によりますが、上記で紹介した合理的配慮の具体例として、学校では保健室や空き教室、会社では会議室や備品置き場などを一時避難場所にしてもらったケースもあるそうです。

定番リラックス法を決めておく

ストレスをためない工夫や自分にあうリラックス法を見つけておくことは、長期的にわたるチック症の軽減、再発防止に役立つのではないでしょうか?リラックス法の例として、睡眠や深呼吸、ストレッチ、好きな香りのする小物や飲み物を携帯するなどがあります。

ヨガなどの軽い運動は「体が心地よい状態」を自発的に作れるので、心身を整える効果があると言われています。リラックスした状態を自分の意思で再現できるようになれば、緊張することは減り、脳神経の反応も安定していくかも知れません。

ご紹介した工夫以外に、最近では「ハビット・リバーサル」と呼ばれる認知行動療法がチック症の治療に有効であると言われています。具体的には、まばたきのチックが出そうな時、あえて指先など一点を凝視し、まばたきをしないように意識するというような行動訓練で、衝動を感じた時にあえて逆の行動をすることでチックを打ち消すという方法です。
参考:トゥレット障害を含むチック障害
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%B3%87%E6%96%99/%E5%9B%BD%E5%A0%B1%E5%91%8A%E4%BC%9A%E8%B3%87%E6%96%99/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%96%BD%E7%AD%96%E5%A0%B1%E5%91%8A%E4%BC%9A%E8%B3%87%E6%96%99/?action=common_download_main&upload_id=1106
ただし、ハビット・リバーサルはあえてチックを意識する行動療法なので、軽いチックには逆効果になることもあります。治療としてとり入れたい場合は、専門家の指導を受けながら計画的に進めていきましょう。
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