ウィリアムズ症候群のある人の乳幼児期の発達の特徴

乳幼児期の発達は、ウィリアムズ症候群の有無にかかわらず、非常に個人差が大きいものです。ここに記載した発達の過程は、目安として考えるとよいでしょう。

運動の発達

ウィリアムズ症候群がある場合、乳児期は筋緊張の低下がみられるため、首がすわるのは1歳過ぎ、一人で歩けるようになるのは2歳過ぎ、座るのは2歳過ぎなど、ゆっくりと発達がすすむことが多いといわれています。

また、指の関節も柔らかいために、つまむなどのこまかな動作ができる時期も遅めです。
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言葉の発達

ウィリアムズ症候群がある子どもは、言葉を話し始めるのも遅いことが分かっていて、1歳半から2歳半くらいの時期に話すことのできるのはごく少数です。

しかし、話し始めるとおしゃべりになる子どもが多く、語彙も豊富で流ちょうに話します。そのため、知的障害があったとしても、気づかれずに誤解を受けることもあるようです。

通常、知的障害をともなう子どもでは、文法の発達に遅れがみられるのが一般的です。しかし、ウィリアムズ症候群のある子どもの場合には、文法の発達には遅れがみられません。

ただ、言語の発達のステップは、定型的な発達とは異なります。

一般的に赤ちゃんは、言葉を話すようになる前には「指差し」をすることで、自分の欲しいものや興味のあることを知らせてくれます。しかし、ウィリアムズ症候群のある子どもは、この指差しをすることがないといわれているのです。
指差しについては、発達ナビの記事で詳しく解説しています。子どもの指差しに不安を感じている方は、ぜひ記事を参考にしてみてください。
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視空間認知障害

視空間認知障害のために、ものとの距離感や奥行きをつかみにくく、着替えや片付けなどの日常動作に困りごとを抱えるケースもよく見られます。お絵かきが苦手だったり、塗り絵では枠からはみ出して上手に塗れなかったりすることもあります。また、なぞり書きや、はさみを使うこともあまり得意ではありません。
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ウィリアムズ症候群のある人の学童期と思春期の発達の特徴

学童期

通常学級に通う子ども、通級制度を利用する子ども、支援学級に在籍する子ども、特別支援学校に通う子どもなどさまざまです。

視空間認知障害は、学童期にも影響を与えます。黒板を書き写すのが苦手なほか、算数の理解などにも遅れが生じることがあります。

ウィリアムズ症候群がある人は、一方で話すことが得意なことが多く、勉強を怠けているのではないかと誤解されてしまう子どももいるようです。学校の先生にはウィリアムズ症候群のことを事前に伝えておくことが大切です。

また、視空間認知障害のために校内で迷子になる、ロッカーの位置を間違えるなどの困りごとも考えられます。

授業を移動するための地図をつくる、板書は写真で記録する、ロッカーは分かりやすい位置にしてもらうなど、その子ごとの配慮をしてもらう必要があるかもしれません。本人と一緒に、本人の困りごとを学校の先生に相談してみてみましょう。
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ウイリアムズ症候群がある人の実際の支援の例

ウィリアムズ症候群・ADHD(注意欠如多動症)当事者の古澤瑛子(アコ)さんのインタビューの一部をご紹介します。
アコさんは、クラスメイトから障害の理解が得られず小学校6年生から中学3年間不登校を選択し、グループホームをフリースクールとして通います。アコさんが通ったグループホームの支援者(高見澤さん)とアコさんは中学、高校時代を以下のように振り返っています。
高見澤:フリースクールとして、うちへの出席を学校の出席扱いにしてもらって、そのまま卒業ですね。

―中学卒業後は、特別支援学校の高等部に通われたとお聞きしました。通常の高校か特別支援学校か、進学先はどのようにして決めましたか?

アコ:やっぱりいじめられたときの印象がずっと残っていて、学校行くこと自体がすごく怖くなってしまっていたんです。でも母親は、やっぱり高校は出てほしいと言うので、先生に相談に乗ってもらいました。

高見澤:うちのフリースクールに通ったあと、高校進学せずにそのまま就職できている人もいっぱいいるんですけど、彼女の場合は、お母さんがものすごく思いつめられていてね。「中学校を不登校にさせてしまったから、せめて高校だけでも」って。

ただ、アコさんは漢字や英語を書くのがどうしても難しくて、その状態で入れる高校の選択肢が当時はほとんどなかったんです。だったら、就職に向けた訓練もできるし、特別支援学校の高等部が良いだろうと。本人はそういった特別支援学級・特別支援学校的なところをそれまで経験していなかったので、入学当初はかなりびっくりしていましたね。
出典:https://h-navi.jp/column/article/35028072
学童期から思春期ごろには保護者の方も将来に向けた不安などがあるかもしれません。しかし、学校だけでなく、相談機関に話してみることで、その子に合った選択肢につながることがあります。

思春期

第二次性徴は、定型発達の子よりゆっくりすすむことが多いようです。

精神的な思春期については、個人差が大きいことが知られており、20歳を過ぎて迎える人もいれば、反抗的になるというような思春期がない人もいます。

ウィリアムズ症候群かなと思ったら

心臓の疾患がある場合

ウィリアムズ症候群は指定難病であることにくわえて、大動脈弁上狭窄などの心臓疾患を抱えている人が多いのも特徴です。まずは、循環器小児科などの専門診療科がある大きな病院で相談してみるのがよいでしょう。
ほとんどの大学病院や総合病院には、ソーシャルワーカーが在籍しています。生活の困りごとや就学の悩みなどの相談にも乗ってもらえます。

心臓の疾患がない場合には

●かかりつけの小児科
まずは、子どもの様子をよく知るかかりつけの小児科で相談してみてください。病気やけがだけでなく、授乳不良なども含めて発達の相談にも乗ってくれます。ウィリアムズ症候群と診断された場合や、その可能性が認められる場合には、専門の病院などを紹介してくれます。

● 地域子育て支援センター
自治体が運営しているセンターです。電話相談を開設している施設も多く、子育ての悩みを無料で相談できる場所です。必要があれば発達検査を実施してくれるほか、無料の療育プログラムなども案内してもらえます。専門家からのアドバイスが受けられるのも、心強い支援です。

● 児童相談所
18歳未満の子どもへの育児中の困りごとや、発達の相談などに応じる施設です。育児中のストレスについて、匿名で電話相談することも可能。もちろん秘密はしっかり守られ、専門家によるアドバイスなども受けられます。

●乳幼児健康診査
乳幼児健診は、自治体の保健センターや小児科などの医療機関で行われます。保健センターでの乳幼児検診では、相談できる部屋が別に設けられているので、不安に思っていることを個別に相談することができます。

確定後は遺伝カウンセリングで相談も

ウィリアムズ症候群であると診断が確定した場合には、遺伝カウンセリングで相談することができます。大学病院など、大きな医療機関に併設されていることが多く紹介状を必要とすることがほとんどですので、まずはかかりつけ医に相談してみてください。
次ページ「ウィリアムズ症候群の治療」

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