家族がひきこもりになったときの対処法

家族がひきこもり状態になったとき、どのように接し、サポートすればよいのでしょうか?

本人がどのような気持ちかを理解する

親や家族は誤解しやすいのですが、本人は「怠けたいから」「働きたくないから」ひきこもっているのではありません。むしろ「ひきこもりをやめたいのにできない」と悩み、家族に対しても申し訳なさや引け目を感じています。そうした気持ちを理解することが大切です。

本人が安心して過ごせる環境をつくる

ゲームをずっとしている、散らかった部屋で昼夜逆転の生活をしているといった状況は、家族にとっては不安を感じ、注意してやめさせたくなるかもしれません。

ですが「家から出す」ために無理やり学校や職場に連れ出したりすることは、逆効果になることがあります。本人にとって、家の中での家族とのつながりさえなくなると、社会とのつながりが完全に断絶されることになるのです。

家族との対立や口論などが続くと、家族とさえ話せない孤立した状況を生み出します。昼夜逆転の生活も、家族と顔を合わせたくないという理由から引き起こされる場合もあります。まずは家を居心地の良い、安全に過ごすことができる環境にすることが、初期の段階での重要なサポートとなります。

ストレスを抱えこまない

ひきこもりの原因は親や家族のせいではありません。ですが、「世間の目」が気になる家族の方も少なくないでしょう。

家族の方の中には自分を責め、子どもがひきこもり状態の場合は「子どもがひきこもっているのに…」と自分の楽しみや外出を控える方もいるようです。また、親子が家に閉じこもり、子どもが保護者に頼り切ることで「共依存」という依存関係に陥ることもあります。

そのような事態を避けるためにも相談機関に相談したり、家族自身がストレスをため込まないように息抜きをしたりしましょう。本人に社会との接点を持つモデルをみせるためにも、家族で閉じこもらないことが重要です。

金銭面での支え方

成人している方の場合、相談機関の受診・診断を経て、障害年金を受給できる可能性があります。年金の受給によって家族の負担が減るだけではなく、本人が家族に小遣いをねだる場合の葛藤やトラブルも減らすことができると考えられます。

お小遣いを渡すと際限なく要求するのではないか、特に大人の場合、ギャンブルなどにつぎ込むのではないかと心配する家族の方もいるかもしれません。お小遣いを渡す場合、事前にルールを決めることも重要です。

【お小遣いのルールの例】
・お小遣いは、十分に与える
・金額は必ず、一定にする
・その額については、本人と相談して決める

斎藤環/著『ひきこもり救出マニュアル』(2002年,PHP研究所/刊)p.372より引用
出典:http://amzn.asia/253Xx9S
お小遣いは、十分に与えるということに関して、家庭の状況や本人が何に使うかによって額は変わります。
またルールを決めたあとは、お小遣いの使途については本人に任せ、家族は口出ししないことも大切です。

お小遣いをねだられる場合、家族としてはなかなか受け入れがたい状況かもしれません。ですが、お店に行って買い物をすることも社会参加の一つです。お金を使う機会を持つことは、外とのつながりを保つためにも重要です。お金のことで暴力などが起こってしまう場合は、抱え込まずに早めに相談機関に連絡、相談をしていくことが大切です。

家庭内暴力への対応

ひきこもり状態の1~2割に家庭内暴力が伴うことがあるといわれています。

本人への遠慮や周りへの相談のしにくさからから容認してしまったり、第三者の介入を避けたくなることもあるかもしれませんが、密室化してしまうことが最も解決を困難にします。家庭内暴力への対処は「開示・通報・避難」を基本とします。

家族だからこそ対処が難しい場合がありますので、専門家に相談することもおすすめします。
家庭内暴力とは?子どもが親に暴力をふるう原因、解決方法や相談先のタイトル画像

家庭内暴力とは?子どもが親に暴力をふるう原因、解決方法や相談先

ひきこもりについての相談先

ひきこもりが長期化すると、「ひきこもりは家族の問題」「できるだけ他人に知られたくない」「一度相談に行ったが十分な対応が得られなかった」「相談にいっても解決しない」など家族で問題を抱え込んでしまうことが多くなります。日本社会に根強い「世間の目を気にする」「家のことは家族で解決する」という文化が、背景にあると考えられますが、そういった家族の気持ちが一層本人を家から出にくくしてしまうこともあります。

また、ひきこもりは時に家庭内暴力や家族内での対立を生んだりします。誰にも言えずに家族だけで解決しようとすると、長期化することで周りの家族にとっても大きな精神的なストレスになります。特に暴力については、早期の相談が大切です。

ひきこもりの支援は長期にわたることもありますが、あきらめず相談機関につながりながら、タイミングを待つことも必要です。ご家族や本人が相談機関につながり続けることが解決に向けて重要なポイントになります。

公的な相談機関

地域の相談支援を行っている機関をご紹介します。電話での相談を行っている場合もありますので、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。

・ひきこもり地域支援センター…ひきこもりに特化した専門的な第一次相談窓口としての機能を有するのが「ひきこもり地域支援センター」です。センターには社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士などがひきこもり支援コーディネーターとして配置されます。相談支援や訪問支援を早期に行うことで、適切な支援につながることを目的にした施設です。
参考:ひきこもり対策推進事業|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html
全国ひきこもり地域支援センター設置状況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000515493.pdf
・精神保健福祉センター…精神保健福祉全般にわたる相談をおこなっています。こころの健康についての相談、精神科医療についてのb相談などとともに、ひきこもりなど思春期・青年期問題の相談も可能です。電話や面接で相談できますが、事前の予約が必要なこともあるのでホームページなどで確認しましょう。
全国の精神保健福祉センター一覧
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html
・保健所…地域の保健所でひきこもりの相談支援を行っている場合があります。電話相談、面談による相談があり、保健師、医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれます。また、相談者の要望によっては、保健師に家を訪問して相談してくれる場合もあります。
保健所管轄区域案内|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/
そのほか、児童相談所、福祉事務所、発達障害者支援センターなどの福祉機関などに相談してもよいでしょう。

医療機関

こころの問題や身体症状が強く出ている場合など、精神科、心療内科、小児科などの医療機関に相談しましょう。心理カウンセリングを行っているところもあります。本人が受診を拒む場合や外出できないときには、まずは家族の相談を受け入れてくれる医療機関もあります。

まとめ

「ご家族が相談にいくこと」がひきこもりの解決への第一歩になります。
「ひきこもりは家族の問題」「できるだけ他人に知られたくない」「一度相談に行ったが十分な対応が得られなかった」「相談にいっても解決しない」など家庭で抱え込むことで、長期化したり、状況の悪化につながる場合も多くあります。
家庭内だけで解決しようとせず、早期に専門機関などへ相談しましょう。周りの支援を受けながら、ひきこもりを抜け出す方法を一緒に考えていきましょう。
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