3日間行方不明!150キロ先で補導。「親なきあと」を考え施設入所を検討し始めた、重度自閉症の兄の脱走事件

ライター:スガカズ
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私の兄は重度の自閉症と知的障害があります。私は子どものころ実家で兄と一緒に生活していましたが、現在兄は障害者支援施設に入居しており、お互い別々の人生を歩んでいます。一緒に暮らしていたときは大なり小なり大変なことはありました。中でも特に大変だったのは、「脱走」…。
その日の内に帰って来られることがほとんどでしたが、次の日になっても見つからない経験もありました。

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監修: 三木崇弘
社会医療法人恵風会 高岡病院 児童精神科医
兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒・東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程修了。 愛媛県内の病院で小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として6年間勤務。愛媛時代は母親との座談会や研修会などを行う。東京に転勤後は学校教員向けの研修などを通じて教育現場を覗く。子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。 2019年4月よりフリーランスとしてクリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、保健所などでの現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動を行う。2022年7月より社会医療法人恵風会 高岡病院で児童精神科医として勤務。

多動が強い兄は、お目当てのものに一直線!小さいころはなんとかつかまえられたけど…

兄が小さかったころ
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重度の自閉症と知的障害がある兄の周りで起こったことを、きょうだい児目線で振り返っています。
一緒に暮らしていたとき、特に大変だったのは、突発的に起こる「脱走」で、これには家族含め、親戚も長い間向き合ってきた問題でした。

兄が初めて脱走したのは3歳のときだったようです。普段から手をしっかり繋いでいても、「気になるもの」を見つけると、小さな子とは思えない力で手を払ってお目当ての場所まで一直線に走り出してしまっていたのだそうです。

今は亡き私たちの母には生まれつき股関節が脱臼しやすい病気があり、歩行は可能ですが走らないように昔から医師に指導されていました。なかなか思うように走れない状態で多動の強い兄を追いかけるのは本当に大変だったようでした。それでも兄が小さいころはなんとか大丈夫だったのですが、成長するにつれ走るスピードがどんどん速くなっていき、母方の親戚を総動員して探すこともありましたし、ときには警察にお世話になることもありました。

母は兄の脱走を減らす目的で、毎日2~3時間ほど散歩の時間をつくっていたそうです。兄が歩いたり走ったりしている後ろで、自力で走れない母は原動機付自転車でついていきます。「満足するまで走らせたほうが、帰宅してから寝てくれるし、突然いなくなることが減るんだよ」と私に話していました。

兄が18歳を迎えたある日の夕方、自宅から突然いなくなり…

兄が18歳を迎えたある日の夕方に
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時は過ぎ、兄が18歳を迎えたある日の夕方、事件が起きます。

兄が一人で自宅を抜け出してしまいました。どうやら、家の内側から取りつけていた脱走防止用の鍵が施錠されていなかったようで、それに気づいた兄が外へ出てしまったようです。母が気づいたころには時すでに遅く、近所を探しても一向に見つかりませんでした。親戚(母のきょうだい)に電話し警察に捜索願を出しました。
母のきょうだいに相談し、捜索願を出すことに
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この日兄は家に帰ってくることはありませんでした。当時は日本でインターネットサービスが導入されていない時代でしたし、街頭に防犯カメラはありませんし、携帯電話も一般的ではありませんでした。わが家には兄のほかにも姉や私がいるため、母が頻繁に探しに行くことは難しく、個人でできることはかなり限られます。ただただ見つかることを祈って警察からの連絡を待っていました。

次の日になりました。母は不安を口には出さずいつも通りに過ごしていましたが、きっと同じような気持ちだっただろうと思います。

■1日経ち、2日経ち…3日目の深夜に警察から電話が

もしかすると誰かに連れて行かれたのではないか?飲まず食わずでどこかで倒れているのではないか?

はたまた…最悪な想像が脳裏に浮かびます。

そしてついに3日目の深夜1時ごろ、自宅に警察からの電話が。
兄がいなくなって3日目の深夜
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一一兄は無事でした。

私はそのとき寝ていたので朝になって兄が帰ってきていることに気がついたのですが、あとになって詳細を知りました。
次ページ「重度心身障害のある兄は、3日間も何をしていた?」

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