夫から「何をしたらいい?」と聞かれた私の答えは

帰宅した夫から最初にどう声をかけられたのは覚えていません。ただ「ごめん」と言われたような気がします。そのあとに「何をしたらいい?」と聞かれ私は「ただ手伝って欲しい」と答えました。すると夫は「何に手を出していいのか分からなかった。手を出したら私に怒られると思ってた」と。
ここで私は「早く帰ってこられるならお風呂、無理なら夕食後の食器洗いと、私が対応できなくくらい疲れているときは、夜中の子どもの対応をやって」と具体的にお願いをしました。するとこの日から、ワンオペ育児が変わったのです。
私が「ただ手伝って欲しい」と言ったところ、「何に手を出していいのか分からなかった。手を出したら私に怒られると思ってた」と夫
私が「ただ手伝って欲しい」と言ったところ、「何に手を出していいのか分からなかった。手を出したら私に怒られると思ってた」と夫
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それからの夫は子どもたちのお風呂や後片づけ、汚れ物の下洗いをやってくれるようになり、私も昼間2人を連れて児童館に行けるくらいの余裕ができました。昼間は児童館で目一杯遊び、夕方帰る前に少し食べさせて汗を拭いて着替えまで済ませると、子どもたちは帰宅後すぐに寝てくれるようになり、私も休める時間が増えました。また、娘の癇癪の回数もほんの少しだけ減った気がしました。

「話さなければ分からない=話せば分かる」ということ。今は積極的に夫に話しています

その日から夫へは何でも伝えるようにしました。息子が多動ではないかということ、娘の人見知りや癇癪、切り替えの悪さが気になることなどもです。その話をずっとしていたので、子どもが9歳になり検査をしてグレーゾーンと言われたときは特に驚くこともなく、それ以降も変化はありませんでした。

私たち夫婦が上手くやっていくために大事なことは、私が1人で抱え込まず、ともかく夫に話すこと、お願いしたいことは具体的に伝えることでした。お金のことも、子育てのことも話さなければ分からない夫ですが、話せば分かってくれることに気づいたので、今では積極的に話すようにしています。

あと片づけや汚れ物の下洗いや子どもたちの靴洗いは、今もずっと続けてくれているのでとても助かっています。
そんなこんなで、今もたまには衝突することもありますが、まあまあ良好に過ごせている私たち。子どもたちと一緒に私たち夫婦もさらなる成長をしていければいいな、と思います。
イラスト/keiko
エピソード提供/みゆねこ

(監修:鈴木先生)
妻が育児などで大変なことは通常は伝えなくても理解できるはずです。それも双子ということで倍忙しいわけですから。お父様にもASDの特性があるのかもしれません。その場合、空気を読むのが苦手で、具体的に言わないと気づけない傾向にあります。さらに視覚的に訴えることも重要です。当たり前の事でもやってくれたら褒めてあげることも必要です。外来でもよくお話しするのですが「優しく・丁寧に・具体的に・肯定文で」接することが重要です。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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