ASD（自閉スペクトラム症）を検査する方法はあるの？

現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。これはASD（自閉スペクトラム症）の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいともいわれています。

ASD（自閉スペクトラム症）の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいの間に何らかの症状をきっかけに専門機関を受診し、医師によって自閉スペクトラム症があると診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などのさまざまな検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いです。

ASD（自閉スペクトラム症）の治療法はあるの？

現在、ASD（自閉スペクトラム症）を根本的に治す薬や手術などの医療的な治療法は開発されていません。しかし療育や環境調整などを通して接し方を工夫することで、本人や周囲の困りごとを軽減することができる場合もあります。また二次障害や合併症の症状を緩和させる治療を受けることもできます。

ASD（自閉スペクトラム症）の特性がある子どもは、幼稚園や保育園、小学校に通うようになると、コミュニケーションの困難から、自分の思いをうまく伝えられなかったり、周りから孤立してしまったりすることも考えられます。日頃から自分の思いをどう伝えたらよいか、パニックにならないように落ち着いて生活するにはどうしたらよいかを教えていきましょう。

また、ASD（自閉スペクトラム症）がある子どもがのびのび生活するためには、周囲の理解と協力が必要不可欠です。保護者はまず本人の性格や特性をよく理解し、周囲に説明し、過ごしやすい環境を整えましょう。

ASD（自閉スペクトラム症）の療育方法

療育とは、以下のように定義されています。

児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。

出典：https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokusho...

療育はできるだけ早く始めると効果が出やすいと言われています。ASD（自閉スペクトラム症）の療育方法はさまざまありますが、代表的なものがコミュニケーションの支援です。

■要求場面で語彙を増やす
ASD（自閉スペクトラム症）のある子どもは自分から話すのが難しいこともあります。子どもがなにかほしい時など、要求場面で発話をうながすと、うまくいくこともあります。例えば、何か欲しいものがある時に、適切な言葉を教えたり、知っている単語を使って「おやつ、ちょうだい」などの二語文が使えるように教えたりすると、効果がでることもあります。

■言葉や行動を理解しやすくする
ASD（自閉スペクトラム症）がある子どもは、話し言葉を理解するのが難しいことがあるため、言葉で説明するのと同時に、絵や写真などを使って説明すると伝わりやすくなることがあります。例えば歯磨きをして欲しい時は、「歯を磨きます」と短い言葉で説明し、歯磨きをしている絵を見せます。聴覚と視覚を同時に使うことで、ASD（自閉スペクトラム症）がある子どもは意味を理解しやすくなることもあります。

■社会的スキルを身に付ける
コミュニケーション能力や社会的なスキルを身につけられるように練習することも重要です。例えば、本人に合わせた挨拶の練習方法を試したり、幼稚園や小学校で先生に昨日のできごとを話したりするなどして、人と関わる練習をしていくことも重要です。
慣れてきたら簡単な役割を与え、褒めてもらえたり、人に喜んでもらえたときのうれしさや、達成感など、ポジティブな感情を体験することによって、情緒の成長を図ることもできます。

薬物療法

ASD（自閉スペクトラム症）は原因がはっきりしていない先天性の脳機能障害であるため、現在の医療で完治させることは難しく、治療薬も開発されていません。

薬が処方されることがありますが、これはASD（自閉スペクトラム症）そのものを治すための薬ではなく、不安障害（不安症）、パニックなど、ASD（自閉スペクトラム症）に付随する症状を緩和するためのものです。その他にも医師により個々の症状に合わせて薬を処方される場合があるので、信頼できる医師に困っている症状を相談してみましょう。薬の服用により症状が緩和されている時には療育や教育の効果も上がりやすくなるともいわれています。

ただし、薬は医師の指示のもと用法や用量を守って服用することが大切です。薬に頼り切って多用するのは避けましょう。

まとめ

ASD（自閉スペクトラム症）が発現するメカニズムはいまだ明らかになっていませんが、原因は一つではなく、人それぞれだと考えられています。また、親の愛情不足やコミニュケーション不足が原因ではないことが明らかになっています。
ASD（自閉スペクトラム症）の原因やメカニズムが解明されれば、治療法などが発見される可能性も高まるでしょう。そのため多くの研究者が様々な研究を進めています。

ですが、ASD（自閉スペクトラム症）の原因についてあれこれと考え悩むことは、子どもの成長や支援にとってはあまり有益ではないかもしれません。それよりも適切な対応法を学び、本人にとって過ごしやすい環境をつくることが重要です。ASD（自閉スペクトラム症）や、本人の特性について正しく理解し、本人の気持ちに寄り添いながら、最適な対応ができるように心がけましょう。

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