経済苦や孤独は、社会との接点を失うきっかけになる

これと同じことは、障害者福祉という分野にも十分にあてはまるのです。

私たちの社会の“余裕のなさ”は、障害のある方への配慮の本質を失わせる理由の1つになりうると考えます。

身近な例で言えば、同じ電車でも昼間の空いている時間帯に車椅子の乗客がいても誰も文句は言わず場所を譲るでしょう。しかし、朝夕の通勤時間帯であればそうはいかない。

「こんな混雑時に車椅子で乗ってくるな」とばかりに障害のある方に厳しい視線を向ける乗客もいるのが実態です。

横塚晃一『母よ!殺すな』で取り上げられている母親による障害児殺しも同じ文脈で語ることが出来るでしょう。

障害のある子どものいる家庭を孤立させれば、その経済的/精神的な負担の重みに耐えかねた母親が自分の子どもを手にかける危険性は高まります。そして苦悩する母親に対する世間の同情が殺人を“正当化”する風潮を作っていくのです。

さて、優生思想に市民権を与えるもう1つの要素は“孤立”です。

入所施設などの自己完結的な隔離型施設は社会との接点を失わせてしまいます。

かつて、障害者が何不自由なく暮らせるように、人里離れたところにコロニーと称する障害者の“楽園”を建設することが福祉だと見なされたこともありました。

しかし、社会との接点がないということは、見方によれば人間の“社会的死(social death)”を意味することでもあります。それが今回の事件のように、いつ「税金の無駄」という理由で“生物学的死(biological death)”にすり替えられてしまうかはわかりません。

この“社会的死”は、どのような人間も陥る可能性があるものです。

引きこもり、精神障害者、認知症患者など、日本では何らかのきっかけで決められたレールから一度外れると、社会との接点を失う可能性は高いのです。

経済学「比較優位」の考え方では、だれしもが社会の一員として活躍できる

では、このような事態を引き起こさないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。
それは、私たちの叡知にあるとお伝えしたい。

その工夫のひとつが、経済学の“比較優位”の考え方にあるのです。(図参照)

比較優位を簡単にいえば、各自の持っている能力の中から相対的に優れているところを見いだし、それを社会に活かすという発想です。
この考えの素晴らしいところは、それが社会全体をより豊かにするという点です。
「障害者福祉は税金の無駄」という意見はなぜ生まれるのか、経済学の視点から考えるの画像
Upload By ある障害児の父
私たちの社会は、人間に優劣をつけ他者よりもすべての面で劣っている人間は使い物にならないと見なしがちですが比較優位の理論に従えば、どのような人間も社会の一員として受け入れることが、全員にとって得となるのです。

優生思想が市民権を得ていき大多数の思想となるのを防ぐためにも、排除の論理の不合理性を明確に指摘し、私たち全員を豊かにする「比較優位社会」の実現が求められるのではないでしょうか。
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