子どもの言語療法

子どもの言葉の遅れには、年月を経るごとに自然と言葉が追いついてくる場合と、発達障害や聴覚障害の兆しとして言葉が遅れているという2つの場合があります。子どもが幼い段階ではその違いに判別がつきにくいことが多いですが、言語療法のトレーニングを受けていると、後から何らかの障害があるとわかった場合にも、専門家を通して適切なサポートを受けることができます。

子どもの言語療法では、言葉に対してだけではなく、運動やコミュニケーションなどその子どもの発達全体に働きかけるようなトレーニングが行われます。

子どもへの言語療法の流れは、以下のようになります。

検査

保護者への問診、遊びを通した行動評定、聴力検査、発達検査、言語学習診断検査などにより、言葉の遅れや偏りの原因を見極め、支援の目標やトレーニングが決められます。

支援、トレーニング

子どもの言語療法の支援は、個人へのアプローチ、環境へのアプローチ、家族へのアプローチの3つの観点から行われます。

■個人に対して
子どもが楽しみながら社会性を伸ばし、日常生活で使える言葉を獲得することを目指して、個別、または集団で遊びを取り入れたトレーニングが提供されます。

子どもの言語の発達レベルに合わせて、聞く、読む、話す、書くことという言葉全般に働きかけてトレーニングを行っていきます。

その他には、コミュニケーションの面を伸ばすトレーニングも豊富に行われます。個々人によって原因は異なるものの、言葉に遅れや偏りがみられるときには、コミュニケーションの面にも偏りがみられることが多いためです。

楽しんで取り組めるような課題に取り組ませる中で、子どもが自発的に言葉を話せるようになることを促します。

例えば、「それ、とって」「もう1回」「どこ?」など、相手へ発信する言葉や、自発的なコミュニケーションなどです。保護者が付き添ってよいこともあれば、保護者と離れて別の部屋で行うこともあります。

■環境に対して
発達段階や本人の状況に合わせて、トレーニングに集中して取り組むことのできるように、環境にも配慮を行います。例えば、部屋の中に集中を妨げる刺激物を最小限にし、スケジュールを黒板に書いて視覚的に伝え時間に見通しを持たせることで、子どもが過ごしやすい環境をつくるなどです。

■ご家族に対して
子どもの発達について理解ができるように、検査の結果子どもの発達段階や、トレーニングを経たことによる子どもの言葉の変化について説明が行われたり、環境への配慮、日常生活の中でできるトレーニングなど、子どもの発達を伸ばすための工夫を教えてくれます。

また、子育てや、子どもの学校生活について家族の抱えている悩みや心配事を相談することもできます。

言語療法を受けるためには?

言語療法はどこで受けることができるの?

言語療法を受けるためには、医師の診察および処方箋が必要な場合があります。まず、かかりつけの病院で症状や困りごとなどを相談した上で、言語療法が必要かどうか判断しましょう。

日本言語聴覚士協会のホームページから、全国の施設検索が可能です。所在地や施設名や障害の種類で詳しく検索できるので、お住まいの近くの言語療法が受けられる施設を調べてみてはいかがでしょうか?

また、自治体によっては言語聴覚士による療育や在宅訪問サービスなどを行っていることもありますので、福祉などの担当窓口で相談してみるとよいでしょう。

以下のHPから、言語療法を行う専門家である言語聴覚士のいる施設を検索することができます。
一般社団法人 日本言語聴覚士協会
https://www.japanslht.or.jp/shisetsusearch.html

言語療法を受けられる施設

■医療機関
病気やけがの治療やリハビリが目的の場合、担当医から紹介・指示を受けることになります。この場合、健康保険が適用となります。また、子どもの場合も医師の診断・指示があれば医療機関で言語聴覚士の指導を受け、健康保険が適用となることもあります。病院のリハビリテーション科を訪れてみましょう。

■教育・療育のサービス
子どもの場合、「言葉の教室」「きこえの教室」といった小学校などの支援級、特別支援学校、療育施設で言語療法を受けられる場合もあります。園や学校に相談したり、自治体に問い合わせましょう。健診や就学前健診で個別に相談・進められる場合もあるようです。その後、面談や審査など、所定の手続きに従います。地域によっても制度が異なりますので、お住まいの自治体に問い合わせましょう。

■福祉施設
施設・地域によって異なりますので、各施設や自治体の定める手続きをとります。訪問リハビリテーションなど介護保険の適用になる場合もありますので、福祉窓口、ケースワーカーや民生委員に相談してもよいでしょう。

■言葉の教室など
民間が行っている言語に関する指導を行う教室です。その場合には、施設に直接申し込みを行います。

言語療法にかかる費用は?

■医療機関
医療機関で治療・リハビリの一環として言語療法を受ける場合、費用は治療内容などによっても異なりますが、健康保険が適用されます。
■教育機関、民間
学校や療育センターなどで言語療法を受ける場合、無料から有料まで、自治体や施設により異なります。年会費などが必要になる場合もあります。

まとめ

言語療法とは、日常生活を送る上で欠かせない言葉や聴覚、嚥下(えんげ)に障害のある子どもや成人に対して行われるリハビリテーションのひとつです。

言葉を使って私たちは生活をしています。阻害されていた言葉や聞こえの問題を解決することは、単に言葉を話す、聞くことができるようになるという機能面の向上に留まらず、言葉を使って人とやりとりや、人とのふれあい通した安らぎというコミュニケーションをとることによる心の安定をもたらします。

障害のある人が、思い通りに言葉によるコミュニケーションを通して人とやり取りを行い、自分らしい生活を送ることのできるように手助けを行うのが言語療法です。
発達障害とことばの相談~子どもの育ちを支える言語聴覚士のアプローチ~
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