発達障害の子どもが恋愛で困ることは?親はどう接すればいいの?

ここでは、発達障害がある子どもが恋愛で困ることや、そのときに親にできることをご紹介します。

発達障害がある子どもの恋愛

発達障害の有無にかかわらず、思春期なると、異性や恋愛に興味が出てくる子どもが増えてきます。恋愛におけるマナーやルールは学校で詳しく教えてもらえるものではなく、体験や経験を重ねて自然と学んでいくことを暗に求められます。

思春期の子どもは、恋愛がどのように進んでいくのか、相手の気持ちを考えるとはどういうことなのかがまだ分かっていないことが考えられます。周囲とのコミュニケーションを苦手とすることが多いので、特にこのような傾向が多いといえます。また、「相手のことが好き」という一方向の気持ちだけで突っ走ってしまうことがあるかもしれません。

思春期において友達関係や仲間関係の影響は、より大きくなります。発達障害のある子どもの場合は、相談できる友達関係や仲間関係が築けないことがあるため、恋愛の悩みを相談できる人が身近にいないということも考えられます。比較的オープンに家庭で話すができる親子関係をつくれるとよいかもしれません。

親が相談相手になれる場合はよいですが、思春期で親に相談しにくい場合はカウンセラーなど第三者に相談できるとよいでしょう。
たとえば、発達障害の子どもがいるご家庭で、こんな体験談が寄せられています。

◆自閉スペクトラム症のある高校3年生のお子さんのエピソード
最近告白して相手もOKだったらしく、息子はもうこの世の春だったんですが、何故か彼女が電話をしても全く出ない、LINEをしても既読スルー・・・

もう、息子はパニックでずっとイライラしてて、とうとうこの前テレビのリモコンを投げて、それがテレビに当たってしまい壊れてしまいました…
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/46909
恋愛でうまくいかないことが、本人にとってもストレスとなり、家族にあたってしまうなど、家庭でトラブルになってしまうこともあるようです。

一方で「話を聞いてほしい」「自分の好きなものを理解してほしい」という自身の経験から相手への気遣いができるようになったというエピソードもあります。

◆ADHDと自閉スペクトラム症のある17歳のお子さんのエピソード
(息子は)女の子との付き合い方やコミュニケーションで気を付けていることが3つあると言います。

聞いてみると、“女の子との”付き合いの中では特に気をつけているけれど、その前に、人付き合い全般で気をつけていることがあって、それが土台になって女の子と話せるようになったといいます。

それは、

●相手の趣味に合わせて話してみる。(わからないことは質問する)
●人の趣味は否定したり、けなさないようにする。
●自分の趣味のマニアックな話は避けるようにする。
というものでした。

そのことに気を付けてコミュニケーションをとっていくうちに、自分の話よりも相手の話を聞いたり、相手の好きな話題を中心に話したりすると仲良くなれる!ということに気がついたといいます。

もともと自分のことや趣味の話をするのが大好きな息子。本当はどんどん話したい気持ちもあるはずですが...

「多くの人は自分の話を聞いてほしいと思っている、理解者が欲しいと思っている。それは自分も同じだったから、
『こんなふうに自分の話を聞いてくれたらな~』や『否定しないで聞いてほしいな~』という気持ちがわかる」

と、相手の気持ちを考えられるようになり、初めて話す人とは肯定的な話し方で、まずは相手の話をたくさん引き出すことで、よい関係を築けるようにしたんだそうです。
出典:https://h-navi.jp/column/article/35027879

恋に悩む!? 子どもに対して親が心がけること

自分の子どもが恋愛で悩んでいるとき、声をかけてサポートしてあげるべきなのか、それともただそっと見守るだけの方がよいのか迷うかもしれません。発達ナビのQ&Aコーナーにもこのような質問が寄せられています。
息子になにげなく「好きな子いるの?」と聞いたところ、素直に「いるよ」と言われたので、「中学校は忙しいから、そういうことは高校生になってからにしようね」と思わず言ってしまいました。

今落ち着いて考えてみると、広汎性で人との付き合いが苦手な部分があるので、付き合ってみるのはどうかと勧めた方が、本人も人付き合いに自信が持てるようになるのかな?なんて思いました。

今まで、小学校時代、ずっと問題児で子供だと思っていた息子君が、恋愛について話しているところをみると、やっと中学生になったんだなと実感しました。

今後、こういう問題ってどう対処すれば良いのでしょうか?
(引用、一部改変)
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/551
一番大事なことは、子どもが抱いている恋愛感情や恋愛に関する悩みを否定しないということ。そして、子どもの必要に応じて相談に乗ったりアドバイスするということです。

保護者の方のなかには「うちの子に恋愛なんてできるのだろうか。うまくいかなくて傷つくだけなら止めた方が良いのではないか」と心配してしまう方もいるかもしれません。

恋愛は誰にとっても難しいものです。さらに発達障害の特性ならではの困りごとがあると、恋愛をすることがより難しく、高度なものに感じられるのも無理はありません。ですが、恋愛は相手を思いやり、うまくやるにはどうしたらいいかを学ぶ良い機会であるといえます。

もし恋愛に失敗して傷ついたとしても、そのプロセスも子どもを成長させます。自分の思い通りにいかないことを学ぶのも、子どもにとって非常に大事なことなのです。

親はまず、子どもが抱く恋愛感情を受け入れてあげましょう。そのうえで、親に相談をしたいのか、気を紛らわせたいのか、それともそっとしておいてほしいのかというような子どものニーズを受け止め、それに合わせたサポートをしていきたいですね。

子どもの恋愛を支えるために、親ができることとは?

◆分かりやすいルールを明示する
恋愛に関するマナーやルールは「何となく知っていく、暗黙の了解」として扱われていることが多いかもしれません。

ですが、「何とはなしに察する、感じ取る」ということを難しく感じているお子さんもいるかもしれません。そのため、親から恋愛に関するルールを分かりやすく具体的に伝えてあげることもよいでしょう。例えば、以下のようなことを伝えると良いかもしれません。

・自分が相手のことを好きだからといって、相手も自分のことが好きかどうかは分からない
・気持ちを確かめる、伝える方法はいろいろある
・勇気を出して気持ちを告白したとしても、断られる場合もある
・メールや電話は、相手のことを考えたタイミングや内容に気をつける
・相手の気持ちは言葉だけでは図ることができない など


また、トラブルや犯罪を防ぐために、やってはいけないことは明確に伝える必要があります。子どもの心身の成長に寄り添いながら、このようなことも忘れずに伝えましょう。

・許可なく急に相手に触らない
・夜遅くまで子どもだけで出歩かない(門限を守る)
・必ず、誰とどこに行くか、何時に帰るかを親に伝えてから出かける など


年齢に応じて性に関することなども本人に分かりやすく伝えられるとよいでしょう。
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成人の場合

成人になると、自分の意思で行動し、その行動に責任を持つ必要があります。これは恋愛に関しても同じことがいえます。恋愛だけでなくその先の結婚を考えに入れることもありますし、ただ「相手が好き」という感情だけではうまくいかないケースも増えてくるかもしれません。

また、それまでの恋愛にまつわる失敗経験がある場合、それが影響して大人になってもなかなか恋愛に積極的になれない、恋愛が怖いと感じている人もいるかもしれません。繰り返しになりますが、発達障害があるからといって恋愛や結婚ができないというわけではありません。自分の特性を理解し、自分にあったペースで恋愛をしていきたいですね。

パートナーが発達障害だったら?

では、恋愛や結婚のパートナーが発達障害のある人の場合、どのようにサポートしていけばよいのでしょうか。また、発達障害の特性により悩みや困りごとがある場合の解決策を見ていきましょう。

相手に感じる不満を発達障害の特性と照らし合わせてみる

「忘れっぽくて困っている」「こちらの考えや気持ちに対しておかまいなしに行動している」など、発達障害があるパートナーに対して、さまざまな不満や困り感を抱いている人は少なくないのではないでしょうか。

このような不満と、パートナーの発達障害ゆえの特性を合わせてみてみると、共通していたり、関係性が見出せたりすることがあります。「どうしてこんな行動をするのだろう」と不満と疑問でモヤモヤしていたのが、「発達障害の特性が影響しているんだ!」と分かるだけでもすっきりとすることがあります。

自分の考えや行動の意図を相手に伝える

発達障害がある人は相手の意図や感情を読み取るのが苦手なことがあります。そのため、こちらが困った、直してほしいと思っていても、パートナーは悪気なくそのような行動や発言をしている可能性があります。

もし嫌だな、直してほしいなと思うことがあったら、具体的に何が嫌だったのか、なぜ嫌だったのか、どうしてほしいのか(謝ってほしいのか、何かを手伝ってほしいのか、など)を一つひとつ丁寧に伝えることを心がけましょう。このように伝え方を工夫すれば、パートナーにも素直に受け入れてもらえたり、嫌だと思うところを直してくれたりするかもしれません。

発達障害があるパートナーとの生活を題材とした漫画やエッセイを読んでみる

発達障害がある人、またそのパートナーの恋愛や結婚生活を描いた書籍や漫画がたくさん出版されています。読みやすい文と親しみやすいイラストが入った本や漫画を通して、発達障害への理解を深めることができます。

また、発達障害があるパートナーと楽しく過ごしているエピソードもたくさん紹介されています。パートナーとの付き合い方の参考にできたり、共感できるエピソードに触れて元気がもらえるかもしれません。
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あまりにつらくなったり、落ち込んだりすることがあったら距離を置いてみる

ある程度の距離を置くことで、抱えている悩みやストレスが改善する人もいます。夫婦や家族の場合、別居という形をとるなどしてストレスのもととなる対人関係から離れることで、気を休めることだけではなく、冷静になったり状況を見つめ直したりすることができる場合もあります。

少し距離を置きたいな、と思った場合は、パートナーに何が不満だったのか、どうして距離を置きたいのかきちんと話すことを忘れないようにしましょう。突然何も言わずに距離を置いてしまうと、発達障害がある人は「今まで仲よくしていたのに、どうして?」と思い、あらゆる方法で理由を探ろうとしたり、嫌われたと思ってひどく落ち込んでしまったりすることがあります。

相手が「距離を置きたい、少し1人になりたい」という言葉の裏側に、どのような気持ちがあるのか読み取ることを難しく感じていることもあります。丁寧に自分の気持ちを伝えることがパートナーとの関係を改善するきっかけにもなります。「そこまで言わせないで、察してよ!」と思うこともあるかもしれませんが、行動や発言に含まれた気持ちもきちんと伝えてあげるようにしましょう。

カサンドラ症候群かなと思ったら早めに対処を

カサンドラ症候群とは、医学的な名称ではありませんが、発達障害などがある人とのコミュニケーションがうまくいかないことで心身の不調が生じた状態を指します。配偶者や恋人など、身近にいる人が、悩みやストレスが解決されないままに悪化した結果、カサンドラ症候群に陥ることがあります。

特徴は、偏頭痛や自律神経失調症といった身体的なものから、自己評価の低下や抑うつといった精神的なものまでさまざまあります。

家族は毎日の生活の中で接する機会は多いですし、パートナーであればなおさら、愛する夫や妻、恋人と心を通わせたいと思う気持ちは強いでしょう。それが難しいときストレスを感じるのは、ある意味当然のことかもしれません。そのストレスが積み重なった結果、体調不良や抑うつといった不調が出ることがあります。

自分がカサンドラ症候群かもしれないと思ったら、専門機関や病院に相談したり、時には1人で落ち着ける時間をつくることをおすすめします。そして、無理のないペースで自分自身とも、相手とも向き合っていきましょう。
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まとめ

自分の特性や経験から、「恋愛や結婚はできない…」と悩んでいる人もいるかもしれません。
自分が発達障害の場合も、パートナーが発達障害である場合も、恋愛において大事なのはそれぞれにある特性や個性、困りごとをお互いに理解することです。こうされたらうれしい、心地よいと思うこと、反対にどうしても苦手なことや嫌だと思うことを伝えあい、理解することが恋愛関係を深め、良いものにするために不可欠です。また、自分とパートナーだけではどうすればよいか分からないときには、周囲に相談するなどサポートを得ることも大切です。これらのことを意識しながら、素敵な恋愛を楽しんでいきたいですね。
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