カナー症候群の症状、年齢別特徴、子育てや療育法について、カナー症候群とアスペルガー症候群との違いも解説

2017/06/21 更新
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「カナー症候群」とは知能や言葉の発達の遅れ(知的障害)を伴う自閉症の通称です。現在の医学的な診断名としては「自閉症スペクトラム」と呼ばれることが定着してきていますが、自閉症状だけではなく知的障害への支援が特に重要になってきます。本記事では「カナー症候群」に位置づけられる自閉症の特徴や診断、子育ての悩み、療育について分かりやすく解説します。

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目次
  • カナー症候群とは?
  • カナー症候群の原因は?
  • カナー症候群の年齢ごとの特徴
  • カナー症候群(自閉症スペクトラム)かな?と思ったら
  • カナー症候群の診断
  • カナー症候群の治療・療育
  • カナー症候群の子育てにおいて大切な考え方や悩みと対処法
  • カナー症候群の人が受けられる支援
  • カナー症候群のある人の家族や周りの人の関わり方で大切なこと
  • まとめ

カナー症候群とは?

カナー症候群(カナー型自閉症)とは、自閉症の中で知的障害を合併する場合を指す用語で、医学的な診断名ではありません。カナー型自閉症、カナータイプなどと呼ばれることもあります。

「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの自閉症の特徴と知的機能の発達の遅れをもつ障害で、3歳までには何らかの症状がみられると言われています。

1943年にアメリカの児童精神科医レオ・カナーによって報告されたため、カナーの名前をとって呼ばれています。

現在、最新の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、自閉症状のある障害は「自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」(ASD)という診断名に統一されています。

しかしかつては、症状によってカテゴリー分けされており、アスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症などさまざまな名称で呼ばれていました。

そのような中でカナー症候群という用語が生まれ、広がった背景には、アスペルガー症候群や高機能自閉症という用語の広がりとの関係があるようです。

アスペルガー症候群や高機能自閉症という、知的障害を伴わない自閉症の概念が拡大するにつれ、それに対する、知的障害のある自閉症を表わす概念としてカナー型・カナー症候群・低機能自閉症などの用語が使用されてきたと考えられます。

つまり、スペクトラム(連続体)と捉えられるようになり、知的障害がない自閉症のタイプが広く知られるようになったことで、逆説的に知的障害のあるタイプを指す用語が必要とされる場が増えてきたということです。

またこれらのタイプは認知機能や言語面での発達に遅れが見られることから、自閉症に対する支援と知的障害に対する支援の両面が必要になり、一様な「自閉症スペクトラム」への支援だけでは不十分なことも多いです。そのため、この記事では「カナー症候群」という用語を用い、その症状や特徴、対処法や受けられる支援を具体的に説明します。
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アスペルガー症候群や他の自閉症とカナー症候群との違いは?

カナー症候群をはじめ、さまざまな自閉症状のある障害が自閉症スペクトラム(ASD)と総称されるようになりましたが、知能指数(IQ)と自閉症状の程度の関係をみると、カナー症候群は以下の図のように位置づけることができます。
カナー症候群の位置づけの図
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【図表は『自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識』を元に発達ナビ編集部にて作成】
図にもあるようにそれぞれのボーダーラインは曖昧で、一人ひとり特徴の表れ方もそれぞれです。

障害名や疾患名に基づいて治療・療育をするのではなく、一人ひとりの子どものニーズや特徴にあわせた療育やサポートを柔軟に行っていくことがとても大切になっていきます。
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カナー症候群の原因は?

さまざまな議論が交わされていますが、 カナー症候群(自閉症スペクトラム)の原因はいまだ特定されていません。しかし、親のしつけや愛情不足が直接の原因ではないことがわかっています。

カナー症候群をはじめ、自閉症スペクトラムは生まれつきの脳機能障害であると考えられており、その機能障害を引き起こすそもそもの原因は遺伝子にあるとみられています。しかし、遺伝子が関与しているからといって親から子に必ず遺伝するタイプの「遺伝病」ではありません。また遺伝的要因だけではなく様々な環境要因も関わっていると考えられています。

出生前診断はできるの?

現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断でカナー症候群と判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。

これは自閉症スペクトラムの原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。
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カナー症候群の年齢ごとの特徴

カナー症候群のある人は、成長していくにつれて症状の特徴も人それぞれ変化していきます。

自閉症状や知的障害の程度の重さや特性は人によって違いますが、乳幼児期から成人以降までのライフステージに分けて、それぞれよく見られる症状や特徴を説明します。

乳幼児期(0歳~6歳くらい)

0歳から1歳までの乳児期は
・声をたてて笑うこと
・「いないいないばぁ」への反応
・抱っこへの積極的欲求
・指さし
などにおいて同月齢の子どもと比べると表出に遅れがみられることがあります。また、人見知りが強い場合もあります。

他にも、個人差がありますが、バイバイの動作や後追い、喃語の発声においても遅れがみられることがあります。

2歳から就学までは以下のような特徴があります。

・こだわりや興味関心の偏りが見られる
気にいったものを見続ける、特定の数字やマークを好む、ドアや窓の開け閉めを繰り返すなどの強いこだわりが見られる場合があります。遊びもミニカーを並べるなどの一人遊びを好み、他の人の介在を拒むこともあります。

・周囲にあまり興味を持たない傾向がある
コミュニケーションの中で視線が合いにくいと感じられる子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、聴力に問題がないにも関わらず、名前を呼んでも振り返らないことも多いです。また、他の人の動作を模倣するのが苦手な子もいます。

・コミュニケーションを取るのが苦手
満2歳までは言語理解がなかなか進まないなどの言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられることがあります。自発的になかなか声を発さず、指さしをして興味を伝えることをしない代わりに、クレーン現象といって相手の手をそこに持っていって意思表示をすることがあります。

集団での遊びにあまり興味を示さず1人で遊ぶこともよくみられる特徴です。勝ち負けの概念やゲームのルールの理解が難しい場合は他の子との遊びに参加できないこともあります。

・パニック・自傷行動が起こりやすい
要求がうまく伝わらないときや、好きなことやこだわりをやめさせようとすると突然泣き出したり、わめいたり、自分の手を噛んだり、頭を殴りつけたりといった行動が生じることがあります。コミュニケーションの発達に伴い改善されることもありますが、学童期にも夏の暑い時や、スケジュールの変更時、勉強中などにパニックを起こしてしまうこともあります。

・視覚、聴覚、味覚などの感覚に特徴がある
視覚に関しては、横目でじっとみつめたり、自分の顔になにかを極端に近付けたりする傾向がある場合があります。鏡、光の点滅、扇風機のような円運動に夢中になったりすることもあります。

聴覚に関しては、騒音や大きな音、サイレンのような不快な音を避けようとして耳をふさぐ傾向がある子もいます。その逆で、紙などでカサカサと小さな音をつくり耳元で聞いて落ち着くケースもあります。

味覚に関しては、極端な偏食がある子も少なくありません。

このような光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを感覚過敏(過剰反応性)と呼びます。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「感覚の鈍感さ(鈍麻・低反応性)」といいます。どちらも感覚のはたらきに偏りがあることが原因です。

これらの特徴は学童期に落ち着くことも多いとされています。
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学童期(6歳~12歳くらいまで)

・こだわりが強く臨機応変に対応するのが苦手
きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向があり、時間、道順、手順、物の位置など習慣化されたものを変更することに抵抗を示すこともあります。

・集団になじむのが苦手
年齢相応の友人関係が少なく、周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう傾向があります。人と関わる時は何かしてほしいことがある時なだけのことが多く、基本的に1人遊びを好む傾向があります。また、学校などの集団生活の中で他者のペースに合わせるのが難しい場合、パニックや自傷が増えてしまうこともあります。

・話を聞いて、理解するのが苦手
視覚的な認知能力が聴覚的な認知能力より優れた人が多く、目に見える物事の理解は得意な場合があります。認知力の発達の遅れから、抽象的な概念の理解が困難であったり、過去の出来事や自分の気持ち、行動の理由の説明などがうまくできないこともあります。

相手の話を聞いて内容を理解したり、相手の気持ちを想像したりすることが難しい場合も多いです。

思春期・青年期(13歳~18歳くらいまで)

子どもに合わせた視覚支援を行い、適切な教育環境を整えることによって、できることも増えてきます。自己コントロールや集団参加も少しずつできるようになり、知的障害の程度により個人差はありますが、認知能力やコミュニケーションも発達してきます。

改善されにくい特徴として、1人でいることを好む、興味や関心の偏り、変化や変更に対する困難などは、成長や療育によっても改善されにくいことがあります。思春期に癲癇(てんかん)などを発症する場合もあります。心配な症状があれば医療機関に相談しましょう。

てんかん発作については以下の記事をご参照ください。
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成人期以降(18歳以降)

知的障害の程度や自閉症状の重篤度によって大きな幅があり、生活で必要とする支援の内容は変わってきます。身辺自立に加えて簡単な調理や買い物、洗濯などの日常生活スキルを学ぶとともに、本人に合うように構造化された環境の中で安定した生活を送れるように支援していく時期です。

しかし、周りに理解を得られなかったり、ASDの特性に配慮されない環境だったりすると、自傷・他害、パニックなどの行動の問題が生じたり重篤化してしまうこともあります。このような場合は、早めに支援機関・医療機関に相談するようにしましょう。

カナー症候群(自閉症スペクトラム)かな?と思ったら

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