書き初めの宿題が憂鬱…書くことが苦手な子どもへのサポート、 習字による書字向上のポイントをご紹介

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年末年始をまたぐ冬休み、多くの学校で書き初めが宿題に出されているのではないでしょうか。書き初めの宿題は、書くことに苦手意識がある子どもにとっては難しく感じられるものです。また、親としてもどうサポートすればよいか悩みどころだと思います。

一方で、書字上達のステップとして活用できることもあります。このコラムでは、親子で書き初めの宿題を乗り越え、書字の上達に結び付けるコツをご紹介します。

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目次 冬休み定番の宿題・書き初め、どう乗り越える? 書き初め、なかなかうまくいかない…その背景って? 書き初めをうまく進めるコツをご紹介! 書き初め、習字は書字技能向上につながるかも! まとめ

冬休み定番の宿題・書き初め、どう乗り越える?

書き初めとは、年が明けて初めて書を書くことです。本来、事始め・仕事始めを意味する1月2日に行うのが伝統とされていて、この日に書き初めを行うと書道が上達すると言われています。そんな日本の伝統・風習から、冬休みには書き初めの宿題を出す学校は、今も昔も多くあります。

ですが「そもそも字を書くことが苦手」「手元と見本を見比べて書くことができない」「半紙や墨をうまく扱えない」など、書くことに関して困り感がある子どもは、書き初めの宿題でつまずいてしまうこともあるのではないでしょうか。特に小学三年生ごろからは毛筆も始まるため、宿題の難易度はさらに上がり、どのように教えたらいいか分からないという保護者もいると思います。

ですが、子どもが書き初めに苦戦している理由を理解し、適切なサポートができれば、練習を通して、子どもの書くことに対する苦手意識を和らげることも可能です。

次に、書き初めをうまくできない背景にある困りごととそのサポート方法、そして書き初めや習字が、なぜ書くことの困り感への解決に役立つのかをご紹介します。

書き初め、なかなかうまくいかない…その背景って?

書き初めが苦手な背景は、子どもによってさまざまです。その中でも、そもそも字を書くことが苦手という子どもに関しては、次のような特性の偏りが原因として考えられます。

書字障害(ディスグラフィア)

書字障害(ディスグラフィア)とは、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推測する」のうち、文字を「書く」ことに困難がある学習障害(LD)です。

書字障害の症状の現れ方や苦手なことは、子ども一人ひとり異なります。代表的な症状には以下のようなものがあります。

・書き文字がマスや行から大きくはみ出してしまう
・鏡文字を書いてしまう

※ただし、鏡文字は幼少期の発達段階で誰にでも起こりうるものなので、必ずしもディスグラフィアの症状とは言えません
・年相応の漢字を書くことができない
・文字を書く際に余分に線や点を書いてしまう

・助詞の使い方がちぐはぐになってしまう(”てにをは”を適切に使えないなど)
・句読点などを忘れる など

特に、太字で示した困りごとは、書き初めをうまく進められない原因に直結しやすいと言えます。
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発達性協調運動障害

協調運動とは、手と手や手と目、足と手など、個別の動きを一緒に行う運動を指しますが、発達性協調運動障害があると、手と手、目と手、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動が著しく困難になります。

人間の運動機能は、粗大運動と微細運動にわかれます。粗大運動は、歩く・走る・姿勢を保持するなど、体全体を使った人間の基本的な運動のことです。一方微細運動とは、持つ・書く・つまむ・ひねるなど、指先を使った緻密な運動を意味します。

通常、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、始めは粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。そのため、協調運動に関する困りごとがある際は、粗大運動の働きからつまずいているのか、その先の段階でつまずいているのかなどを確認する必要があります。

書き初めでは、普段はあまりしない姿勢をとりながら、あまり使い慣れていない筆を使って字を書くことになります。お手本を見ながら手を動かすという協調運動も必要になります。つまり、さまざまな動きや、その協調が必要となる複雑な運動といえます。

発達性協調運動障害があると、書き初めを行う際に次のようなことに困難を感じる可能性があります。

・姿勢を維持するのが苦手で文字を書くことに集中できない
・筆を握り続けることができない
・筆先が震えてしまう
・紙を触る力加減が分からず、破いてしまう
 など
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視空間認知の弱さ

視空間認知とは、目から入った視覚の情報を処理し、空間の全体的なイメージをつかむための機能です。ものとの距離感や奥行き、文字や形を把握する時に使われます。

視空間認知は、運動機能や記憶力とも関連する重要な機能です。それゆえに、視空間認知が弱いと、ものを覚えることや、体を動かすことに対して苦手意識を感じることが多くあります。

視空間認知が弱いと、書き初めを行う際に次のようなことが起こるかもしれません。

・文字が折り目などで決めた範囲内に収まらない
・お手本と手元をバランスよく見比べ、書き写すことができない
・硯(すずり)の決められた位置に墨汁を入れ、筆に墨をつけるという一連の作業がうまくできない
など
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ADHD(注意欠陥・多動性障害)

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害のことです。この3つの症状は、人によってその現れ方の傾向が異なります。大きく、「多動性-衝動性優勢型」「不注意優勢型」「混合型」という3タイプに分かれています。

ADHDの子どものこのような特性からもたらされる行動によって学業、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあります。書き初めをする際に、次のようなことが起こるかもしれません。

・一定時間座って習字をすることができない、集中力が続かない
・うまく書けないとイライラしてしまい、言動に出てしまう
・習字道具の取り扱いが苦手(すぐものを無くしてしまう、筆や硯(すずり)を洗い忘れてしまう)
 など
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自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害です。

書き初めに取り組むような年齢の子どもには、次のような特徴が多くみられます。
・集団になじむのが難しい
・臨機応変に対応するのが苦手
・どのように、なぜといった説明が苦手 など

また、自閉症スペクトラム障害の子どもには、上述した発達性協調運動障害や、特定の刺激を過剰に受け取ってしまう感覚過敏などを併発することもあります。以上の特性から、書き初めを行うときには、次のようなことが起こるかもしれません。

・書く字の一部分にこだわってしまい、他の字の練習に取り組めない
・紙の肌触りや墨の匂いなどが苦手
・学校と家との環境の違いにうまく対応できず、学校では習字に取り組めていたのに家ではできなくなってしまう
など
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書き初めをうまく進めるコツをご紹介!

子どもが感じている困りごとを踏まえ、書き初めの宿題を進めるにはどのような工夫があるのでしょうか。

書き初めが進まない根本の原因を探る

書き初めがうまくできない…という悩みの背景には、字を上手に書けないということだけでなく、姿勢の維持や目線の動かし方の不器用さ、集中力維持の困難さなど、さまざまな原因が考えられます。

子どもが書き初めに苦戦する原因は何なのか、習字に取り組んでいる様子や書き上げた作品、また普段の学校での学習状況も含めて総合的に判断する必要があります。根本の原因を理解したうえで、どんなサポート方法が子どもに有効かを検討してみましょう。

習字道具の用意から作品完成まで、スモールステップで「見える化」する

「書き初めの宿題をやるぞ!」と意気込んだものの、習字道具を用意し、紙に字を書く練習をし、清書に取り組み、道具を片付ける…書き初めの宿題を終えるまでには多くの工程があります。

一つひとつリスト化したり、イラストなどを使って視覚的に分かるようにしたりすることで、子ども自身も何から取り組めばいいか混乱することを防ぐことができます。また、どこまでは子ども自身の力で取り組め、どこからはサポートが必要なのかを、明確にすることができます。
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お手本の配置や使い方を、子どもの特性に合わせる

習字はお手本を見ながら手元で字を書く、ということが基本です。先ほど説明した視空間認知をはじめ、見ることに困り感がある子どもには、子どもに合わせたお手本の配置が必要になります。右に置くのか左に置くのか、目線のちょっと先に置くのか、完全に横並びにして置くのかなど、子どもが一番書きやすい距離感をつかみ、設定してあげることが大切です。

また、最初は、お手本を鉛筆で写し書きした半紙で練習させたり、お手本と手元の半紙の間にラップを敷いてお手本を汚さないようにし、透けて見えるようにして練習させるなど、お手本の上から書けるよう工夫をしている家庭もあるようです。

習字練習に便利なグッズを活用する

習字練習用のグッズの利用で、子どもが筆を使って書くことに楽しさを見出すことが期待できます。例えば、次のようなグッズがあります。

・水だけで習字の練習ができるキット
墨を使わず、水だけで簡単に習字の練習ができます。しばらく置いておくと書いた字が消えるので、子どもも気軽に習字の練習に取り組むことができそうです。
書道セット 水書き 水でお習字セット
呉竹
NEW お習字ボード
くもん出版
・ゆび筆
指にはめて使うタイプの筆です。まだ筆を握るのが難しい場合などに、指書きの要領で文字を書けるゆび筆を利用してみるのもいいかもしれません。
ゆび筆 ポップコーン 大筆 子供用 30504
墨運堂
・カラフルな作品収納グッズ
書き上げた作品を収納するグッズも、カラフルなものやかわいらしいデザインのものが増えています。子どもが好きな色の作品収納グッズを使うと、子どものやる気も上げられるかもしれませんね。
書道用 作品ファイル 半紙用 ピンク KN22-2
呉竹

書き初め、習字は書字技能向上につながるかも!

ここまで、書き初めをするうえでの困りごとや、それに対する解決策をご紹介しました。書くことに関して苦手意識がある子どもにとって、書き初めや習字は工夫なしでは辛い時間になるかもしれません。

ですが、書き初めや習字は、そもそも書くことが苦手、という子どもに対して良いアプローチになることも期待できます。

習字がどうして書字技能向上につながるの?

普段の学校の授業では、子どもはノートやプリントなど、比較的小さい紙に、鉛筆やシャープペンシルを使って文字を書いていると思います。

一方、書き初めや習字の場面では普段使っているより大きな紙と、太い筆を用います。これら書き初めや習字に使うような道具は、書くことが苦手と感じている子どもが普段使っている道具より以下のような点から、相性が良いことが多くあります。

・大きな紙でのびのびと書くことができる
・太くて握りやすい筆で、鉛筆より安定して文字を書くことができる
・筆圧によって線の太さが目に見えて変わるので、筆圧コントロールのヒントを得られる
 など

普段、小さいマス目から文字がはみ出てしまう、筆記用具をうまく使えない、など字を書くことに対して失敗体験が多い子どもも、習字だからこそ、書くことに対する前向きな気持ちを育めることもあります。

そして、習字を通して字を書く成功体験を少しずつ積み重ねることで、結果として書字技能全体の向上につながることがあるのです。

障害のある子ども向け施設のプログラムにも用いられている

また、放課後等デイサービスなど、障害のある子ども向けの施設では、子どもの生活力や創造性の向上をねらいとして、さまざまなプログラムを実施しています。

習字は書字に対する困りごとの克服や、書字技能を磨くきっかけになり得ます。また、集中力や落ち着きを高めるトレーニングにもなるほか、子どもの創造性を伸ばすことにもつながります。

こうした理由から、習字・書道を行う施設もあります。子どもの書字技能を伸ばしたい、集中力を身につけさせたい、などの理由から習字に興味がある方は、こういった施設のプログラムを活用してもいいかもしれません。
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まとめ

昔から冬休みの宿題の定番である書き初め。字を書くことが苦手、じっとして机に向かうことが難しいという子どもにとっては、おっくうになってしまいがちなのではないでしょうか。

子どもが書き初めに苦戦する背景にある困りごとを理解し、そのうえで子どもに合ったサポートを取り入れてみましょう。そうすることで、書き初めの宿題を乗り越えられるだけでなく、書字技能の向上にもつながることがあります。

また、子どもが習字を練習するための便利グッズも販売されています。このようなグッズも活用しながら、新年、子どもと一緒に筆を取ってみてはいかがでしょうか。
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