書き初めの宿題が憂鬱…書くことが苦手な子どもへのサポート、 習字による書字向上のポイントをご紹介
ライター:発達ナビ編集部
年末年始をまたぐ冬休み、多くの学校で書き初めが宿題に出されているのではないでしょうか。書き初めの宿題は、書くことに苦手意識がある子どもにとっては難しく感じられるものです。また、親としてもどうサポートすればよいか悩みどころだと思います。
一方で、書字上達のステップとして活用できることもあります。このコラムでは、親子で書き初めの宿題を乗り越え、書字の上達に結び付けるコツをご紹介します。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
冬休み定番の宿題・書き初め、どう乗り越える?
書き初めとは、年が明けて初めて書を書くことです。本来、事始め・仕事始めを意味する1月2日に行うのが伝統とされていて、この日に書き初めを行うと書道が上達すると言われています。そんな日本の伝統・風習から、冬休みには書き初めの宿題を出す学校は、今も昔も多くあります。
ですが「そもそも字を書くことが苦手」「手元と見本を見比べて書くことができない」「半紙や墨をうまく扱えない」など、書くことに関して困り感がある子どもは、書き初めの宿題でつまずいてしまうこともあるのではないでしょうか。特に小学三年生ごろからは毛筆も始まるため、宿題の難易度はさらに上がり、どのように教えたらいいか分からないという保護者もいると思います。
ですが、子どもが書き初めに苦戦している理由を理解し、適切なサポートができれば、練習を通して、子どもの書くことに対する苦手意識を和らげることも可能です。
次に、書き初めをうまくできない背景にある困りごととそのサポート方法、そして書き初めや習字が、なぜ書くことの困り感への解決に役立つのかをご紹介します。
ですが「そもそも字を書くことが苦手」「手元と見本を見比べて書くことができない」「半紙や墨をうまく扱えない」など、書くことに関して困り感がある子どもは、書き初めの宿題でつまずいてしまうこともあるのではないでしょうか。特に小学三年生ごろからは毛筆も始まるため、宿題の難易度はさらに上がり、どのように教えたらいいか分からないという保護者もいると思います。
ですが、子どもが書き初めに苦戦している理由を理解し、適切なサポートができれば、練習を通して、子どもの書くことに対する苦手意識を和らげることも可能です。
次に、書き初めをうまくできない背景にある困りごととそのサポート方法、そして書き初めや習字が、なぜ書くことの困り感への解決に役立つのかをご紹介します。
書き初め、なかなかうまくいかない…その背景って?
書き初めが苦手な背景は、子どもによってさまざまです。その中でも、そもそも字を書くことが苦手という子どもに関しては、次のような特性の偏りが原因として考えられます。
書字障害(ディスグラフィア)
書字障害(ディスグラフィア)とは、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推測する」のうち、文字を「書く」ことに困難がある学習障害(LD)です。
書字障害の症状の現れ方や苦手なことは、子ども一人ひとり異なります。代表的な症状には以下のようなものがあります。
・書き文字がマスや行から大きくはみ出してしまう
・鏡文字を書いてしまう
※ただし、鏡文字は幼少期の発達段階で誰にでも起こりうるものなので、必ずしもディスグラフィアの症状とは言えません
・年相応の漢字を書くことができない
・文字を書く際に余分に線や点を書いてしまう
・助詞の使い方がちぐはぐになってしまう(”てにをは”を適切に使えないなど)
・句読点などを忘れる など
特に、太字で示した困りごとは、書き初めをうまく進められない原因に直結しやすいと言えます。
書字障害の症状の現れ方や苦手なことは、子ども一人ひとり異なります。代表的な症状には以下のようなものがあります。
・書き文字がマスや行から大きくはみ出してしまう
・鏡文字を書いてしまう
※ただし、鏡文字は幼少期の発達段階で誰にでも起こりうるものなので、必ずしもディスグラフィアの症状とは言えません
・年相応の漢字を書くことができない
・文字を書く際に余分に線や点を書いてしまう
・助詞の使い方がちぐはぐになってしまう(”てにをは”を適切に使えないなど)
・句読点などを忘れる など
特に、太字で示した困りごとは、書き初めをうまく進められない原因に直結しやすいと言えます。
「書くのが苦手」はディスグラフィア(書字表出不全)かも?症状、原因、困りごと、対処法まとめ【専門家監修】
発達性協調運動障害
協調運動とは、手と手や手と目、足と手など、個別の動きを一緒に行う運動を指しますが、発達性協調運動障害があると、手と手、目と手、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動が著しく困難になります。
人間の運動機能は、粗大運動と微細運動にわかれます。粗大運動は、歩く・走る・姿勢を保持するなど、体全体を使った人間の基本的な運動のことです。一方微細運動とは、持つ・書く・つまむ・ひねるなど、指先を使った緻密な運動を意味します。
通常、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、始めは粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。そのため、協調運動に関する困りごとがある際は、粗大運動の働きからつまずいているのか、その先の段階でつまずいているのかなどを確認する必要があります。
書き初めでは、普段はあまりしない姿勢をとりながら、あまり使い慣れていない筆を使って字を書くことになります。お手本を見ながら手を動かすという協調運動も必要になります。つまり、さまざまな動きや、その協調が必要となる複雑な運動といえます。
発達性協調運動障害があると、書き初めを行う際に次のようなことに困難を感じる可能性があります。
・姿勢を維持するのが苦手で文字を書くことに集中できない
・筆を握り続けることができない
・筆先が震えてしまう
・紙を触る力加減が分からず、破いてしまう
・力のコントロールが苦手でとめはねなどがうまくできない
・硯で墨をすったり墨汁をついだりする動作が苦手で墨をこぼしてしまう など
人間の運動機能は、粗大運動と微細運動にわかれます。粗大運動は、歩く・走る・姿勢を保持するなど、体全体を使った人間の基本的な運動のことです。一方微細運動とは、持つ・書く・つまむ・ひねるなど、指先を使った緻密な運動を意味します。
通常、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、始めは粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。そのため、協調運動に関する困りごとがある際は、粗大運動の働きからつまずいているのか、その先の段階でつまずいているのかなどを確認する必要があります。
書き初めでは、普段はあまりしない姿勢をとりながら、あまり使い慣れていない筆を使って字を書くことになります。お手本を見ながら手を動かすという協調運動も必要になります。つまり、さまざまな動きや、その協調が必要となる複雑な運動といえます。
発達性協調運動障害があると、書き初めを行う際に次のようなことに困難を感じる可能性があります。
・姿勢を維持するのが苦手で文字を書くことに集中できない
・筆を握り続けることができない
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・硯で墨をすったり墨汁をついだりする動作が苦手で墨をこぼしてしまう など
DCD(発達性協調運動症)とは?具体的な特徴や対応法/専門家監修
何度も椅子から落ちる息子が「発達性協調運動障害」と診断されるまで
視空間認知の弱さ
視空間認知とは、目から入った視覚の情報を処理し、空間の全体的なイメージをつかむための機能です。ものとの距離感や奥行き、文字や形を把握する時に使われます。
視空間認知は、運動機能や記憶力とも関連する重要な機能です。それゆえに、視空間認知が弱いと、ものを覚えることや、体を動かすことに対して苦手意識を感じることが多くあります。
視空間認知が弱いと、書き初めを行う際に次のようなことが起こるかもしれません。
・文字が折り目などで決めた範囲内に収まらない
・お手本と手元をバランスよく見比べ、書き写すことができない
・硯(すずり)の決められた位置に墨汁を入れ、筆に墨をつけるという一連の作業がうまくできない など
視空間認知は、運動機能や記憶力とも関連する重要な機能です。それゆえに、視空間認知が弱いと、ものを覚えることや、体を動かすことに対して苦手意識を感じることが多くあります。
視空間認知が弱いと、書き初めを行う際に次のようなことが起こるかもしれません。
・文字が折り目などで決めた範囲内に収まらない
・お手本と手元をバランスよく見比べ、書き写すことができない
・硯(すずり)の決められた位置に墨汁を入れ、筆に墨をつけるという一連の作業がうまくできない など
視空間認知とは?発達障害との関連について
ビジョントレーニングとは?「見る力」と学習障害(限局性学習症)との関わりは? 【専門家監修】
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)は不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害のことです。この3つの症状は、人によってその現れ方の傾向が異なります。大きく、「多動性-衝動性優勢型」「不注意優勢型」「混合型」という3タイプに分かれています。
ADHDの子どものこのような特性からもたらされる行動によって学業、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあります。書き初めをする際に、次のようなことが起こるかもしれません。
・一定時間座って習字をすることができない、集中力が続かない
・うまく書けないとイライラしてしまい、言動に出てしまう
・習字道具の取り扱いが苦手(すぐものを無くしてしまう、筆や硯(すずり)を洗い忘れてしまう) など
ADHDの子どものこのような特性からもたらされる行動によって学業、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあります。書き初めをする際に、次のようなことが起こるかもしれません。
・一定時間座って習字をすることができない、集中力が続かない
・うまく書けないとイライラしてしまい、言動に出てしまう
・習字道具の取り扱いが苦手(すぐものを無くしてしまう、筆や硯(すずり)を洗い忘れてしまう) など
ADHD(注意欠如多動症)の3つのタイプとは?【専門家監修】
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害です。
書き初めに取り組むような年齢の子どもには、次のような特徴が多くみられます。
・集団になじむのが難しい
・臨機応変に対応するのが苦手
・どのように、なぜといった説明が苦手 など
また、自閉症スペクトラム障害の子どもには、上述した発達性協調運動障害や、特定の刺激を過剰に受け取ってしまう感覚過敏などを併発することもあります。以上の特性から、書き初めを行うときには、次のようなことが起こるかもしれません。
・書く字の一部分にこだわってしまい、他の字の練習に取り組めない
・紙の肌触りや墨の匂いなどが苦手
・学校と家との環境の違いにうまく対応できず、学校では習字に取り組めていたのに家ではできなくなってしまう など
書き初めに取り組むような年齢の子どもには、次のような特徴が多くみられます。
・集団になじむのが難しい
・臨機応変に対応するのが苦手
・どのように、なぜといった説明が苦手 など
また、自閉症スペクトラム障害の子どもには、上述した発達性協調運動障害や、特定の刺激を過剰に受け取ってしまう感覚過敏などを併発することもあります。以上の特性から、書き初めを行うときには、次のようなことが起こるかもしれません。
・書く字の一部分にこだわってしまい、他の字の練習に取り組めない
・紙の肌触りや墨の匂いなどが苦手
・学校と家との環境の違いにうまく対応できず、学校では習字に取り組めていたのに家ではできなくなってしまう など
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの0歳~6歳、小学生、思春期まで年齢別の特徴、診断や治療、支援、接し方など【専門家監修】
感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?発達障害との関係、子どもの症状、対処方法まとめ【専門家監修】
書き初めをうまく進めるコツをご紹介!
子どもが感じている困りごとを踏まえ、書き初めの宿題を進めるにはどのような工夫があるのでしょうか。
書き初めが進まない根本の原因を探る
書き初めがうまくできない…という悩みの背景には、字を上手に書けないということだけでなく、姿勢の維持や目線の動かし方の不器用さ、集中力維持の困難さなど、さまざまな原因が考えられます。
子どもが書き初めに苦戦する原因は何なのか、習字に取り組んでいる様子や書き上げた作品、また普段の学校での学習状況も含めて総合的に判断する必要があります。根本の原因を理解したうえで、どんなサポート方法が子どもに有効かを検討してみましょう。
子どもが書き初めに苦戦する原因は何なのか、習字に取り組んでいる様子や書き上げた作品、また普段の学校での学習状況も含めて総合的に判断する必要があります。根本の原因を理解したうえで、どんなサポート方法が子どもに有効かを検討してみましょう。
習字道具の用意から作品完成まで、スモールステップで「見える化」する
「書き初めの宿題をやるぞ!」と意気込んだものの、習字道具を用意し、紙に字を書く練習をし、清書に取り組み、道具を片付ける…書き初めの宿題を終えるまでには多くの工程があります。
一つひとつリスト化したり、イラストなどを使って視覚的に分かるようにしたりすることで、子ども自身も何から取り組めばいいか混乱することを防ぐことができます。また、どこまでは子ども自身の力で取り組め、どこからはサポートが必要なのかを、明確にすることができます。
一つひとつリスト化したり、イラストなどを使って視覚的に分かるようにしたりすることで、子ども自身も何から取り組めばいいか混乱することを防ぐことができます。また、どこまでは子ども自身の力で取り組め、どこからはサポートが必要なのかを、明確にすることができます。
夏休みの宿題、最終日にもう泣かない!ドリル・自由研究・日記・作文・図工…お悩み別の解決法をご紹介
お手本の配置や使い方を、子どもの特性に合わせる
習字はお手本を見ながら手元で字を書く、ということが基本です。先ほど説明した視空間認知をはじめ、見ることに困り感がある子どもには、子どもに合わせたお手本の配置が必要になります。右に置くのか左に置くのか、目線のちょっと先に置くのか、完全に横並びにして置くのかなど、子どもが一番書きやすい距離感をつかみ、設定してあげることが大切です。
また、最初は、お手本を鉛筆で写し書きした半紙で練習させたり、お手本と手元の半紙の間にラップを敷いてお手本を汚さないようにし、透けて見えるようにして練習させるなど、お手本の上から書けるよう工夫をしている家庭もあるようです。
また、筆の動かし方を擬音語にしてあげると理解しやすい場合もあります。「チョン、ス~ッ、ギューッ、スッ」などと一緒に口に出しながら教えてあげるのもおすすめです。
また、最初は、お手本を鉛筆で写し書きした半紙で練習させたり、お手本と手元の半紙の間にラップを敷いてお手本を汚さないようにし、透けて見えるようにして練習させるなど、お手本の上から書けるよう工夫をしている家庭もあるようです。
また、筆の動かし方を擬音語にしてあげると理解しやすい場合もあります。「チョン、ス~ッ、ギューッ、スッ」などと一緒に口に出しながら教えてあげるのもおすすめです。
習字練習に便利なグッズを活用する
習字練習用のグッズの利用で、子どもが筆を使って書くことに楽しさを見出すことが期待できます。例えば、次のようなグッズがあります。
・水だけで習字の練習ができるキット
墨を使わず、水だけで簡単に習字の練習ができます。しばらく置いておくと書いた字が消えるので、子どもも気軽に習字の練習に取り組むことができそうです。
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・ゆび筆
指にはめて使うタイプの筆です。まだ筆を握るのが難しい場合などに、指書きの要領で文字を書けるゆび筆を利用してみるのもいいかもしれません。
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・カラフルな作品収納グッズ
書き上げた作品を収納するグッズも、カラフルなものやかわいらしいデザインのものが増えています。子どもが好きな色の作品収納グッズを使うと、子どものやる気も上げられるかもしれませんね。
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