ADHD(注意欠如多動症)とは?3つのタイプ、特徴、原因、治療方法、併存しやすい疾患など【保存版!発達ナビADHDコラム一覧/専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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ADHD(注意欠如多動症)は発達障害の1つで、不注意、多動性、衝動性などの特性があり、日常生活に困難を生じます。特性の多くは12歳以前にあらわれますが、幼い子どもにみられる特徴と区別することが難しいため、就学期以降に診断されることが多いと言われています。また、個人差はありますが、成長に伴って多動性が弱まるなど、特性のあらわれ方が変化することもあります。
このページではADHD(注意欠如多動症)の特徴、原因、治療方法、併存しやすい疾患などについて専門家監修のもと、解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ADHD(注意欠如多動症)とは

ADHD(注意欠如多動症)は発達障害の1つで、不注意、多動性、衝動性などの特性があり、日常生活に困難を生じます。特性の多くは12歳以前にあらわれますが、幼い子どもにみられる特徴と区別することが難しいため、就学期以降に診断されることが多いと言われています。また、個人差はありますが、成長に伴って多動性が弱まるなど、特性のあらわれ方が変化することもあります。

ADHD(注意欠如多動症)の特徴は? 症状は何歳ごろから現れる?3つのタイプについても解説

ADHD(注意欠如多動症)に見られる特徴は、「人の話に集中できない」「落ち着きがない」「ものを良く壊す」「順番が待てない」「なくしもの・忘れ物や遅刻が多い」などです。
ADHD(注意欠如多動症)の特性があらわれ始めるのは2歳ごろで、幼稚園~小学校に入学するころから目立つようになることが多いと言われています。

さらに、特性のあらわれ方によって、多動・衝動性の傾向が強いタイプ、不注意の傾向が強いタイプ、多動・衝動性と不注意が混在しているタイプの3つに大別されます。
ADHD(注意欠如多動症)の特徴とは?2歳ごろから現れる?チェックリストも【専門家監修】のタイトル画像

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ADHD(注意欠如多動症)の3つのタイプとは?【専門家監修】のタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)の3つのタイプとは?【専門家監修】

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ADHD(注意欠如多動症)の原因は?

ADHD(注意欠如多動症)は生まれつきの脳機能障害です。乳幼児期の育て方によって発症するものではありません。ADHD(注意欠如多動症)のある人の脳では、前頭葉や線条体と呼ばれる部位において、ドーパミンなどの神経伝達物質の機能障害が起きていると考えられています。また、遺伝的要因も関連していると言われています。
参考:e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
ADHD(注意欠如多動症)は遺伝する確率があるの?兄弟、父親、母親との関係は?【専門家監修】のタイトル画像

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ADHD(注意欠如多動症)の診断基準は?

ADHD(注意欠如多動症)の診断基準には、アメリカ精神医学会の「DSM-5」(「精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版)が多く用いられています。

ADHD(注意欠如多動症)には、話を集中して聞けない、作業が不正確、なくしものが多いといった「不注意」、体を絶えず動かす、離席する、おしゃべり、順番を待てないなどの「多動性」「衝動性」の特性があり、日常生活に困難を生じます。また、これらの症状が12歳になる前に出現します。

しかし、定型発達の場合でも、2~3歳ごろまではじっとしていられず、集中力も長くは続かない子どもが多いため、上記の条件を満たしていても就学期ごろまで診断がつかないこともあります。

ADHD(注意欠如多動症)の診断は、医師が診察において患者の行動特徴を観察し、その結果と診断基準を照らし合わせ、ほかの精神疾患と鑑別された上で行われます。
参考:厚生労働省「ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html

ADHD(注意欠如多動症)の治療法は?薬はあるの?

ADHD(注意欠如多動症)の治療には、療育や教育などの心理・社会的アプローチと、薬物療法などの医療的アプローチがあります。

療育では、環境調整・ソーシャルスキルトレーニング・ペアレントトレーニングといった手法が用いられます。このような発達支援は、発達障害専門の病院や公立・民間の「児童発達支援」「放課後等デイサービス」などで受けることができます。
ADHD(注意欠如多動症)の治療法・療育法は?治療薬は効果的なの?【専門家監修】のタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)の治療法・療育法は?治療薬は効果的なの?【専門家監修】

現在、ADHD(注意欠如多動症)を完全に治癒させる薬はありません。しかしながら、不注意・多動性・衝動性の症状を緩和する対症療法としての薬物治療はしばしば行われています。ADHD(注意欠如多動症)の治療に主に用いられているのは、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)です。また、2019年12月からは、リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)が使用可能になりました。それぞれの薬剤は用量、用法や、効き方、副作用などが異なるため、状況に応じて使い分けられます。
ADHD(注意欠如多動症)がある子どもの薬物療法とは?ビバンセ、コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、それぞれの違いと副作用を解説――マンガで学ぶ発達障害の薬【医師監修】のタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)がある子どもの薬物療法とは?ビバンセ、コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、それぞれの違いと副作用を解説――マンガで学ぶ発達障害の薬【医師監修】

ADHD(注意欠如多動症)は障害者手帳を取得できる?

障害者手帳とは、障害のある人が取得できる手帳の総称です。身体障害者手帳(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由など)、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。

ADHD(注意欠如多動症)や、二次障害としての精神障害が原因で日常生活へ支障がある人は、精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。また、知的障害(知的発達症)を伴う場合、療育手帳の対象となることもあります。精神障害者保健福祉手帳の申請には医師による診断書が必要ですが、療育手帳の申請には医師による診断書は不要です。詳しくはお住まいの市町村にお問合せください。
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障害者手帳とは?種類ごとの申請方法と受けられるサービスを一挙にご紹介

療育手帳(愛の手帳)取得してる?対象者やIQとの関係、判定基準、B1とB2、障害者手帳との違いなど専門家が回答。取得の実態は?【行政書士QA】のタイトル画像

療育手帳(愛の手帳)取得してる?対象者やIQとの関係、判定基準、B1とB2、障害者手帳との違いなど専門家が回答。取得の実態は?【行政書士QA】

ADHD(注意欠如多動症)と併存しやすい障害や疾患と、症状の例

ADHD(注意欠如多動症)はさまざまな併存症があると言われています。ASD(自閉スペクトラム症)、LD・SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動症)、知的障害(知的発達症)、うつ病、双極性障害(双極症)なども併存することがあります。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の1つです。
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LD・SLD(限局性学習症)

LD・SLD(限局性学習症)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなど大きく3つの分類があります。これらの困難が、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習における面のみでの困難であること、という場合に限り診断されます。
学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。
参考:学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
参考:学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について|文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1396626.htm
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DCD(発達性協調運動症)

DCD(発達性協調運動症)とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。
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知的障害(知的発達症)

知的発達症(知的障害)とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力・社会適応能力の発達が全般的に遅れた水準にある状態を指します(発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能が低下しても、知的障害⦅知的発達症⦆とは言いません)。
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うつ病

うつ病とは気持ちが落ち込み、その感情を抑えることができずいつも通りの生活を送ることができなくなる精神疾患です。
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双極性障害(双極症)

双極性障害(双極症)は、気分が著しく昂揚した状態の「躁状態」と、そもそも楽しさを感じない、楽しい出来事に興味がわかない状態の「うつ状態」の2つの精神状態が繰り返し現れる病気です。
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