「ここだと体温管理くらいしかできない。今、何があるというのではなく、何があってもおかしくない体重なので、念のためNICUに入れたほうがいいと思う」
翌朝、病室にお出でになった先生はそう言いました。
下チビがこの世にこんにちはしてから、まだ6時間もたっていませんでした。
「そうかぁ。おかしいとは思っていたけど、やっぱりあれだけ小さいと何があってもおかしくないんだなぁ。じゃあ、NICUをお願いした方がいいのかなぁ」
2000グラム未満は低体重児。ちびっ子は1954グラム。満期産で生まれた割りに不自然なチビスケ具合。
それでも、このときのあつまは、まだ相当にのほほんさんでした。「念のため」という先生の言葉を素直に信じてた。
高知のNICUが、国立に3床、医療センターに12床しかないことも、県下全域から赤ちゃんが集まる医療センターに、「念のため」なんて余裕が、そうそうあるはずないってことも、当時は知らず、その中で、即受け入れOKが出たとういことが、どういう意味なのか、全く考えていなかった。
先生はやっぱり何か思うところがあったんでしょう。気になるからNICUを進めてくれたんだと思います。
小さい保育器に入れられ、パパが運転する車に看護師さんと一緒に乗せられ…っていうか、これもまた中々アンビリーバボなお話だよねぇ。
だって自家用車よ。
「救急車は、急を要する患者さんのための車だからね」
まあ、わかりますけど。
それでも、2000グラムにも満たない、生まれたてほやほやのわが娘を車に乗せたパパは、気が気じゃなかったに違いない。
あつま、パパに足向けて寝られません。いや、寝てるけどね。
さて、ここからは聞いた話。
医療センターに着いたパパさんは、NICUに通され、
「一通り検査をしますので、こちらでお待ち下さい」
と、ICルームに通されたそうです。
で、待つこと数時間。
「娘さんの状態をご説明します」
このとき、明け方の出産に始まり、帰宅後ほとんど寝ないうちに再度呼び出され、更に神経を使う運転をしてきたパパはほぼ寝ていたわけですが、そこに告げられたのは、衝撃的な内容でした。
四肢短縮・足指奇形・特徴的顔貌・腎臓の片方欠如・肺動脈狭窄・大動脈縮窄・心疾患による全身浮腫・哺乳力欠如
「できればお母様にも詳しくお話したいので、一度産院に許可を取って、一緒にお出でいただけないでしょうか」
そう言われて、まだ抜糸も済んでいないあつまが、車に揺られて医療センターに出かけたのは二日後でした。
まともに座れず、リクライニングさせた助手席で、ずっと見上げていた空は五月晴れの抜けるような青。
ICルームでパパが受けたのと同じ内容を一通り聞き、当面NICUで様子を見ること、心臓については、カテで時間を稼ぐか、外科手術をするかそれによって決めること。手術であるなら、県外に行く必要があることなどを聞かされました。
「気になる点が多いので、染色体検査をしていいか」という先生の言葉に、二つ返事でOKを出しました。
それから産科退院後、毎日何時間もNICUに通いました。
少し泣いたとか、ミルクを口に入れたとか、いいところばかり追いかけて、このまま、何事もなく育って欲しいと思っていた矢先。
その日も、お昼ご飯を軽く食べて、NICUに行こうとしていた午後1時半ごろ、パパの電話が鳴ったのです。
「今日は何時ごろお出でになりますか?出来れば早めにお出でいただきたいのですが」
作りかけのきのこパスタ。フライパンにたまねぎとシメジを残したまま、とるものもとりあえず車に乗った。
生後2週間でした。
長くなりました。続きはまた次回。
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